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がんばろう日本!!――震災・原発との総力戦【無料】

小此木潔

小此木潔 上智大学教授(政策ジャーナリズム論)、元朝日新聞論説委員

 未曽有の大震災と未曽有の原発危機・放射能汚染が列島を震撼させている。

 この複合危機との総力戦は、長丁場とならざるをえない。言うまでもなく、まず何よりも優先すべきは、一人でも多くの命を救うこと、そして避難した人々を支援すること、そして山場をまだ超えていない原発大事故をなんとかコントロールし、甚大な放射線被害と生活破壊をさらにとめどなく拡大しかねない原発の暴走を食い止めることである。がんばろう日本。我々の持てる全ての力を発揮して。

 大震災によって尊い命を落とした人は数万人に及ぶのではないか。被災地に広がる嗚咽と悲しみは、どこまでも続いている。避難した数十万の人々の生活苦や今後の厳しい人生をなんとしてでも助けていくことが、国民全体の課題であることは論をまたない。

 だが、なんということだろう。原発事故がここまで悪化してしまうとは。

 まず問題なのは、東京電力と経済産業省の原子力安全・保安院の当事者能力の乏しさだ。福島第一原発の1号機の建屋が水素爆発で吹き飛んだあとの記者会見の遅さ、内容のお粗末さには、悲しいものがあった。官房長官の会見の無内容さだけを責められない。東電がきちんと報告すべきところを、していなかったとしか考えられない。

 その後、いささかの改善はあったが、会見を聞くたびに国民のストレスは強まったことだろう。包み隠さず情報開示し、あらゆる英知を結集して対処すべき局面で、いくつもの失敗を重ねたことが事態を悪化させる背景になったのだとの印象をぬぐえない。

 たとえば、水で冷却するための電源確保の遅さである。

 電源車の輸送を当初から自衛隊に要請するなど、もっと早くする手だてはあっただろう。送電線の臨時敷設も、同時並行して自衛隊に協力要請すべきだった。水の確保も、真水にこだわらず、海水注入を当初から決断していれば、もっと迅速にできただろうし、それで冷却に成功していたかもしれない。

 海水を注入すると原発が二度と使えなくなるので、それを躊躇していたとすれば、致命的な判断の誤りだったのではあるまいか。国民の生命の安全を最優先に考え、決断することが、なぜできなかったのか。解明は今後にゆだねるとしても、このことをまずは反省して、最悪の事態回避に政府と東電が一体となって全力をあげてほしい。

 現場で身の危険を顧みる余裕すらなく冷却や電源確保の作業を続けてきた作業員の皆さんや消防、自衛隊などの皆さんには心から感謝こそすれ、批判するつもりは毛頭無い。たとえそこにいくつものミスがあったとしても、それは事故の深刻さに加えて東電本社の戦略的判断の誤りからくる人手不足(マンパワーの投入不足)が背景にあると思う。

 現場の奮戦を必死で支えるためにこそ、東電と政府に反省を求めたい。そして、現場の人手不足や水不足、電源不足を補うために、全力で支援する体制を構築し、維持するよう求めたい。いまからでも決して遅くはない。全国そして海外にいる専門家や原発に詳しい実務家、作業員からボランティアを募って、現場の人々に応援部隊を送ってもらいたい。東電以外の電力会社や産業界などにそうした人材はある程度はいるはずだ。

 現場の放射能は増えている。作業は短時間ずつ、交代でしかできない。ということは、現場の作業を続けるためには、多くの人員が必要とされる。残念ながら、原発とのたたかいは長丁場になってしまった。その長きにわたる戦いを、一部の東電従業員や下請けの人たちと自衛隊、消防関係者だけに任せていてはいけない。日本全体の力と知恵を結集し、米国など世界の国々から人材と機材の応援を得て、世界の人々の協力をもとにたたかいを継続する戦略を立てなくてはいけない。そうしない限り、この震災の危機は収束に向かわないだろう。

 「がんばろう日本」――。世界が私たちのたたかいを見守り、応援してくれる。それを信じて最善を尽くそう。このたたかいに負けるわけにはいかない。

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筆者

小此木潔

小此木潔(おこのぎ・きよし) 上智大学教授(政策ジャーナリズム論)、元朝日新聞論説委員

上智大学教授。群馬県生まれ。1975年朝日新聞入社。富山、奈良、大阪、ニューヨーク、静岡、東京で記者をしてきた。近年は日本の経済政策や世界金融危機など取材。2009年5月から東京本社論説委員室勤務、11年4月からは編集委員も務め、14年4月から現職。著書に「財政構造改革」「消費税をどうするか」(いずれも岩波新書)、「デフレ論争のABC」(岩波ブックレット)。

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