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知恵を絞ろう 集中型から分散型へ【無料】

永井隆

永井隆 ジャーナリスト

 原子力発電による安価な電気を、ジャブジャブと使えた時代は終わった。

 海水を注入した原子炉は、もう使えないだろう。廃炉にするしかない。その一方で、東日本巨大地震による今回の事故により、国内での原発新設はもはや考えられない。

 国内の発電量の約4割は、原子力が担う。しかも、原子力は石炭火力や流れ込み式水力とともに、電力供給のベースとなっている。電力需要にかかわらず、原発はいつも一定の運転を行い、安く大量に電力を供給する体制を支えてきた。この構造が、崩壊してしまったのだ。

 東京をはじめ東日本では、これから電力は不足していく。計画停電は継続され、連動する形で電車の運行に影響を与える。火力発電所を今後フル稼働させても、供給量には限界がある。しかも、原油価格は高騰しているため発電コストは高くつく。

 そもそも、東日本の電源周波数は50ヘルツに対し西日本は60ヘルツ。この違いから、関西電力や中部電力から東京電力への送電は限定されていて、需給に応じた柔軟な供給はできないという事情もある。

 では、これからそうするべきか。

 電力不足と電気が高価になるなかで、働き方を含めライフスタイルそのものを、省エネ型へと切り替える必要に迫られる。窮極の節電はもちろん、電力の消費量が大きい大型テレビを観るのを控えるなど、家庭では環境性能の劣る家電や自動車は、使わないようにしていくべきだろう。できれば今夏からのサマータイム制導入も検討すべきであり、特に企業は在宅勤務を増やしていく必要に迫られる。通勤そのものを減らすことができ、電車の運行本数を削減できる。

 もっとも、計画停電や電力不足による大規模停電が頻発すると、せっかくの在宅勤務もうまくはいかない。

 そこで、電力の供給体制を現在の集中型から分散型へと、シフトさせていくべきだ。早急にである。

 具体的には、一般住宅や集合住宅にリチウムイオン電池を使った蓄電池、さらに太陽光発電装置を設置していく。安価な深夜電力、さらには太陽光で発電した電気を蓄電池に貯めておくのだ。1日3時間程度の停電ならば、パソコンやネット、家庭用空調の使用には応えられ、家庭での仕事に心配はない。現状でも、日産自動車の「リーフ」、三菱自動車工業の「i-MiEV」といったEV(電気自動車)を蓄電池として利用するのも、技術的には可能だ(EVから電気を取り出す簡単な設備は必要)。

 ただし、問題はコストである。蓄電池に使うリチウムイオン電池にせよ、太陽光発電装置にせよ、まだ高い。もちろん、EVもである。10万km程度走行して廃車にするEVの電池を、家庭用蓄電池として再利用しようとする計画はある。新品の8割前後の性能を維持でき、安く使えるメリットはある。が、EVの廃車を待っていたのでは遅すぎる。

 東日本地域に限定した補助金策などを考え、早期に地域や家庭で使用する蓄電池の普及を促進すべきである。電池メーカーには、標準タイプの18650(18㎜径×650㎜)サイズを中心とするリチウムイオン電池の低価格化は求められる。ちなみに18650タイプは、ノートPCなどに使われている。蓄電池に太陽光発電を組み合わせることで、二酸化炭素(CO2)排出も抑えられる効果もあるが、分散型の電力供給を構築する決め手は電池にかかる。

 原発に頼る電力の供給体制は壊れたため、新たな一歩を踏み出していかなければならない。これから、高コストな電気を、大切に使っていくしかないのだ。みんなで、知恵を出し合ってである。

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筆者

永井隆

永井隆(ながい・たかし) ジャーナリスト

ジャーナリスト。1958年生まれ、群馬県桐生市出身。明治大学卒。1992年、勤務先の新聞社が実質的に経営破たんし、新聞を休刊。これに伴い失業を経験。93年にフリーで独立。新著に「サントリー対キリン」(日本経済新聞出版社)。著書に「人事と出世の方程式」、「国産エコ技術の突破力!」、「ビール最終戦争」、「敗れざるサラリーマンたち」など。

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