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【緊急報告】(4) 要介護者の避難に、広がれ「鴨川モデル」

松浦新

松浦新 朝日新聞経済部記者

 20日、千葉県鴨川市の「かんぽの宿鴨川」に、福島県いわき市の老人保健施設「小名浜ときわ苑」のお年寄り120人と、施設の職員がまるごと「疎開」してきた。いろいろなメディアで伝えられているが、単なる引っ越しではないことが十分に伝わっていないように感じるので、その意義と広がりについて伝えたい。

 ポイントは、そもそも宿泊施設であって、介護をするには不十分な施設であるかんぽの宿での運営に、引き続き介護保険が適用されることだ。この適用で、介護保険からの給付が受けられて事業が継続できる。しかも、いわき市の介護保険から給付されるため、疎開先となった自治体の介護保険には負担がかからない。

 いわき市での生活が可能になった時にそのまま元に戻すことで、介護施設が継続され、従業員の雇用も維持される。小名浜ときわ苑は、福島第一原発から50キロ以上離れていて、避難地域ではない。しかし、建物の毀損、上下水道の破壊に加え、一部が避難地域になっているいわき市は「風評被害」で物流が途絶え、事業の継続が危機に瀕していた。

もし、かんぽの宿での介護保険適用が認められなければ、介護難民と失業者が同時に発生する心配があった。入所者が他地域で別の老健施設に入ることも可能だが、そもそも、介護施設は大幅に不足している。しかも、新しい施設で新しい職員との関係を築いていかねばならない。高齢者にとっては厳しい環境の変化になったことだろう。今回の疎開が係者の間で「鴨川モデル」と呼ばれる理由だ。

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