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危機の時になぜ円高になるのか

原田泰

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

 大空襲にあったかのような被災地の姿には言葉もない。東日本巨大地震で被災にされた方々に心からお見舞い申し上げます。

 日本は、この震災によって、道路や鉄道、発電設備や工場、学校や住宅を失った。要するに、貧しくなった。貧しくなったらどうするか。家を失ったら、新たに家を建てるために働かなければならない。貯金を崩して家を建て直す人もいるかもしれない。その場合でも、他の目的のために用意しておいた貯金が減ってしまう訳だから、働いて貯金を元に戻したいと思うだろう。あるいは、消費を切り詰めて貯蓄を元に戻したいという人もいるだろう。

◇貧しくなったら働くしかない◇

 消費の切り詰めについては後で考えるとして、働いて建て直すことを考えよう。

 夫は残業を望み、妻が専業主婦だったら働きだそうとする。子どももアルバイトをしようと考える。皆がより多く働こうとする。ここで、今まで働いていなかったのはなぜかと言えば、豊かだったので、そのときに与えられた賃金では働く気にならなかったからだと考えるしかない。貧しくなったので、働かざるを得なくなって働きだすのである。賃金が下がっても働くのである。

 少しくらい賃金を下げたからと言って仕事がある訳ではないという声があるかもしれない。しかし、少し下げれば仕事が増える手段がある。その手段は円レートである。中国の賃金は日本の10分の1だから、少しくらい円安になっても日本の仕事は増えないという人もいる。

 しかし、決まるのはつねにぎりぎりのところだ。日本の賃金が中国の10倍でも、多くの日本人が現に職に就いている。10倍の賃金でも、個々人の技能の高さ、インフラの良さ、製造技術の秘密保持など、日本で雇用を維持する様々な理由がある。円が10%下がって、日本の賃金が中国の9倍になれば、日本で維持したい雇用は増えるだろう。円安になるとは、貧しくなって働きたい人が、より働けるようになるということだ。

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筆者

原田泰

原田泰(はらだ・ゆたか) 原田泰(早稲田大学教授)

 早稲田大学教授。1974年東京大学卒業後、同年経済企画庁入庁、経済企画庁国民生活調査課長、同海外調査課長、財務省財務総合政策研究所次長などを経て、2012年4月から現職。「日本はなぜ貧しい人が多いのか」「世界経済 同時危機」(共著)「日本国の原則」(石橋湛山賞受賞)「デフレはなぜ怖いのか」「長期不況の理論と実証』(浜田宏一氏他共著)など、著書多数。政府の研究会にも多数参加。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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