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就活の危機を回避せよ 大震災で迷走する学生と企業(1)

常見陽平

常見陽平 評論家(雇用・労働、キャリア、若者論)

 ■3.11、学生の手帳が真っ白になった

 「学生の真っ黒だった手帳が、3.11をきっかけに真っ白になりました」

 そう語るのは都内中堅私大就職課の課長代理だ。就職課を訪れる新4年生の相談はほぼ100%、今回発生した大震災に伴う採用活動延期によるものである。日本経団連の「倫理憲章」に賛同した企業はこの4月1日から、2012年度新卒の選考を本格スタートさせるはずだった。しかし、震災後に採用活動の延期をする企業が続出。説明会や選考など、学生の予定は吹き飛んだ。

 慶應義塾大学経済学部4年で総合商社、電機メーカーなど多くの業界・企業を受けている女子学生によると「予定通り行うのは、大手印刷会社くらい。他は軒並み延期。このまま採用がなくなるのではないかと思うことすらある」という。

 地方学生もそうだ。高崎経済大学の地域政策学部の4年生男子によると「流通系など、地元の有力企業も採用活動を延期。就活はストップ状態」だと言う。震災の直接的な影響がない名古屋大学の文学部で学ぶ4年生女子はこう語る。「周りにはもう内定を持っている学生がいる。しかし、本命企業の選考は4月。モチベーションを保つのが大変そう」

 震災を受けて、就活、新卒採用活動は大きく混乱している。ここ数年、新卒採用の内定率低下や、就活の早期化・長期化による学業阻害、就活の煩雑化・肥大化など、「日本の新卒採用はこれでいいのか?」「新卒一括採用をやめるべきではないか?」などが問題となっていた。これに対して、日本学術会議、日本経団連、経済同友会など、学術団体、経済団体から「卒業3年以内は新卒扱いにする」「採用広報スタート時期を後ろ倒しにする」などの改革案が出されていた。しかし、このような究極的事態が発生すると、これらの真剣な議論すら牧歌的だったようにさえ思えてくる。

 3.11後の就活の就活は、混乱し、時期が分散化しつつも、2010年代型の新モデルを模索し始めている。レポートを2回に分けてお届けしよう。

■学生に募る不安、不信感 変わる企業選びの基準

 「エントリーしていた企業から、“採用活動を延期する”という知らせがあった後、まったく連絡がなくなった」

 学生からはこんな声をよく聞く。既に日系のコンサルティング会社2社から内定が出ている一橋大学大学院の女子学生はこう語る。「内定が出た2社のうち、1社から連絡が途絶えた。内定取り消しがあるのではないか、不安だ」

 震災の影響を受けて、東北エリアなどを中心にこの4月に新社会人となる学生の内定取り消しも報告されている。学生たちは、 ・・・ログインして読む
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筆者

常見陽平

常見陽平(つねみ・ようへい) 評論家(雇用・労働、キャリア、若者論)

人材コンサルタント。株式会社クオリティ・オブ・ライフ フェロー。HR総合調査研究所客員研究員。実践女子大学・白百合女子大学・武蔵野美術大学非常勤講師。北海道札幌市出身。一橋大学卒業後、株式会社リクルート入社。とらばーゆ編集部、トヨタ自動車との合弁会社などを経て、玩具メーカーに移り新卒採用を担当。2009年株式会社クオリティ・オブ・ライフに参加。2012年に退社し、フェロー。就活、サラリーマンの今後をメインテーマに講演、執筆、研究・調査、コンサルティングなどに注力し、面白い社会人をデビューさせるべく奮闘中。著書に『「就社志向」の研究』、『普通に働け』など多数。最新刊に『アラフォー男子の憂鬱』(共著)

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