木代泰之
2011年04月14日
国際的な連携はよいことだが、緊急事態の原発の取り扱いや放射性物質の処理能力の面で、米仏の技術力と日本との差があまりにも歴然と見えてきた。日本は行政も電力会社も、経済性のよい原発を効率よく運転することに集中してきたが、いったん壊れると他国の助力なしでは処理できないもろさを見せた。ふだんは無駄なように見えても、危機に対応する技術や人材、経験を蓄積し、危機管理の体制をしっかり作ること。それが今回の教訓だ。
政府が「原子力緊急事態宣言」を出したのは、震災当日3月11日。さっそく「原子力災害対策本部」ができたが、政府は事故処理の陣頭指揮をせず、東京電力に任せたまま。自衛隊や東京消防庁も東電を応援する立場で動いた。「これではまずい」と、政府が東電を抱え込むように「福島原発事故対策統合連絡本部」を作ったのが15日のこと。この間、政府は緊急防災のリーダーシップを果たせなかった。
米国では地震発生と同時に、原子力規制委員会(NRC)が24時間体制で原発情報の収集を始めた。NRCは、原子力エネルギー問題や原子力安全に関する監督権限を持ち、職員は専門技術者らを中心に約3000人の大組織だ。日本に専門家2人を急派する一方、国防総省など米政府関係機関に向けて独自に情報発信を始めた。
14日には日本に派遣する支援チームを11人に増強。米大使館が16日、日本滞在中の米国人に原発から80キロメートル以遠に離れるよう勧告したのは、NRCの情報に基づいている。4月7日に東電は原子炉格納容器に窒素を注入したが、これもNRCの指摘を受けて行った。
国防総省も動いた。
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