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震災後の農業新生

山下一仁

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 我が国有数の食料基地である東北地方の農業は、今回の震災で大きな被害を受けた。農林水産省は、津波により流失や冠水等の被害を受けた農地は、24千ヘクタール(73百万坪に相当)であると公表した。特に、宮城県の太平洋岸地域の市町村では42%もの農地が被害を受けている。被害農地の多くは、平野部の優良農地である。

 塩分濃度が高まれば、作物は水分を吸収することができず、枯れ死する。仙台市の農地の塩分濃度は、通常の農地の19倍にも達し、数年間米の作付は困難だと言われている。地震による地盤沈下も激しい。さらに、茨城県や千葉県でも、大規模な液状化によって大量の砂や泥が水田に噴き出し、農業用パイプラインも破損するという被害が生じている。今回の震災で大きな被害を受けた農地の機能を回復するためには、がれきの除去、海水につかった農地の除塩、水路、パイプラインの補修など、相当の費用と時間を覚悟しなければならない。

 津波で被害を受けた農地については、その多くは畔もなくなっているので、元あった一筆の農地の形状を復元することは難しいし、高齢な農業者が、新たに機械を購入して、営農を再開することも、困難だろう。

 しかし、これは、非効率だった農業を効率的な農業に新生させる大きなチャンスである。田んぼの効率性は四隅の数で決まると言われる。同じ3ヘクタールの規模の農家でも、

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