小此木潔(おこのぎ・きよし) ジャーナリスト、元上智大学教授
群馬県生まれ。1975年朝日新聞入社。経済部員、ニューヨーク支局員などを経て、論説委員、編集委員を務めた。2014~22年3月、上智大学教授(政策ジャーナリズム論)。著書に『財政構造改革』『消費税をどうするか』(いずれも岩波新書)、『デフレ論争のABC』(岩波ブックレット)など。監訳書に『危機と決断―バーナンキ回顧録』(角川書店)。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
小此木潔
浜岡原発の全面停止は、きわめて妥当な判断である。マグニチュード9.0の大地震と大津波、そして原発の大事故が起きたという現実は、既存の震災対策や原発の安全対策の全面的見直しが必要であることを我々に突きつけている。「地震が起きても原発は安全」という専門家たちの判断や説明がもはや通用しない新たな地平に立ってものごとを判断しなくてはならなくなったのである。
東海地震の想定震源域の真上に原発を建設するという考え自体に、もともと無理があったところへ、これまでもすでに浜岡原発は地震に脆弱であることが示されてきた。だからこそ1,2号機は廃炉にするという選択を中部電力自身がしてきた。3~5号機を止めることについては、浜岡が福島第1のような原発事故に陥った場合の被害を想定してみるだけで妥当性がわかるに違いない。
地元の御前崎市はもちろん、島田、藤枝、焼津、静岡などの各市はもちろん、東海道新幹線や東名高速が放射能汚染にさらされ、日本全体がマヒする。しかも東京など関東一円には、現在のスギ花粉と同様に放射性物質が降り注ぐだろう(富士の宝永の噴火のさい江戸に火山灰が降り積もったことも参照すべきかもしれない)。このような危険を放置しておくことは、もはや許されなくなった。
菅政権がそのことを真摯に考えた結果であれば、浜岡の全面停止という判断はきわめて正しい。政治的動機として人気取りのようなことがあったかもしれず、説明不足などさまざまな問題があるにせよ、この判断は歴史の検証に耐えうるだろう。
だが、このことを逆に言えば、
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