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東京電力の決算はウラまで読め(1)―上場を続ける価値があるのか

松浦新

松浦新 朝日新聞経済部記者

拡大海江田万里経産相(右)に支援要請書を手渡す東京電力の清水正孝社長=5月10日午前11時35分、首相官邸
 東日本大震災にともなう福島第一原発事故の損害賠償に対する政府の支援策が示され、東京電力は2011年3月期決算をする。「損失額は1兆円」とも言われるが、それは数字が確定されたものにすぎず、決算書をよく読む必要がある。上場を続ける意味があるのか。

 5月20日に予定されている東電の決算発表のポイントは次のように考えられる。

(1)政府の支援は被災者への賠償のため

(2)廃炉費用などを考えると「3兆円の純資産」では間に合わない

(3)今後も損失は出続ける

(4)東電は損害賠償を支払う「窓口」のような存在

(5)各国があきらめた「核燃料サイクル」の幻想を追い続けるのか

 13日にまとまった政府の東京電力支援策は、あえてたとえれば、銀行の預金保険のようなものだ。銀行の預金保険は預金者保護が目的なので、ペイオフになれば銀行は破綻処理される。今回、国が保護する対象は、原発事故で家に住めなくなった人たちや、農業、漁業をはじめとする地域の産業などであって、東電ではない。

 預金保険との違いは、事故が起きてから制度ができた逆転現象だけではない。新設される支援のための「機構」は、膨大な損害賠償を東京電力のために立て替えるが、東電はそれを返すために存続する構図になっている。

 ここで、東京電力の2010年3月決算を見てみよう。売上高5.0兆円、経常利益2千億円で、総資産額13.2兆円、純資産は2.5兆円もある。昨年12月時点の第3四半期決算を見ると、この間の増資もあって、純資産はさらに3.0兆円に膨らんだ。

拡大福島第一原発に近い浪江町から避難した漁業者を対象に開かれた福島県の巡回就職相談会。集まった人たちは担当の職員と長い間話し込んでいた=5月13日午後1時48分、福島市の野地温泉ホテル、相場郁朗撮影
 新設される機構は「援助には上限を設けず、必要があれば何度でも援助」するというので、10兆円とも言われる損害賠償は東電を通じて支払われる。「原子力事業者を債務超過にさせない」と記されているので、東電は経営破綻を逃れられそうに見える。

 ただし、

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筆者

松浦新

松浦新(まつうら・しん) 朝日新聞経済部記者

1962年生まれ。NHK記者から89年に朝日新聞社に転じる。くらし編集部(現・文化くらしセンター)、週刊朝日編集部、オピニオン編集部、特別報道部、東京本社さいたま総局などを経て現在は経済部に所属。共著に社会保障制度のゆがみを書いた『ルポ 老人地獄』(文春新書)、『ルポ 税金地獄』(文春新書)、『負動産時代』(朝日新書)などがある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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