武田洋子
2011年06月07日
米格付会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは5月31日、日本の自国通貨建て・外貨建て債務の格付け(Aa2)を引き下げ方向で見直しの対象とすることを発表した。見直しの理由として、(1)東日本大震災による経済・財政コストが当初想定以上に大きいこと、(2)現在の政策の枠組みでは財政赤字削減を達成できないこと、(3)長期的財政再建戦略が脆弱なことなどを指摘している。
日本の財政状況は震災前から厳しい状況にあり、政府債務残高の対GDP比率は、約200%とギリシャやアイルランドよりも高い。さらに今後は、高齢化による社会保障負担と復興費用が日本財政に重くのしかかる。しかも、政局の混乱が続き、本来なら国会で集中して行うべき社会保障改革、復興財源の担保、中長期の財政再建に向けた議論は遅々として進んでいない。ムーディーズの指摘は決して大げさなものとはいえない。
日本国債に厳しい目を向けているのはムーディーズだけではない。同じく米格付会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は1月に格下げを実施したばかりであるが、さらに4月27日に格付け見通しを引き下げた。しかし、こうした格付け会社のアナウンスに対し、市場はほぼ無反応である。なぜか。
振り返ってみれば、非常に深刻な財政状況が続く中でも国債は円滑に消化され、長期金利(長期国債利回り)は、2000年代を通じて低位で推移してきた。これには相互にも関係する6つの理由がある。
第1に、低い成長期待がある。生産年齢人口の減少とともに
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