原田泰
2011年06月08日
米国格付会社が、相次いで日本国債の格付引下げを示唆し、また引き下げている。確かに、日本の財政状況は酷い。であるにもかかわらず、また、格付会社の度重なる警告にもかかわらず、国債は順調に消化され、金利は一向に上がらない。なぜだろうか。
◇日本の金利はなぜ低いのか◇
金利が低い理由は様々にある。日本のことに限らず一般的に言えば、金利が低い理由は、貯蓄が潤沢にある、投資先がない、為替変動が怖い、デフレである、財政が黒字で政府の資金需要が民間の資金需要と競合していない(日本は財政が赤字なのに金利が低いので不思議なのである)、などである。高い理由は、低い理由の逆である。例えば、デフレではなくインフレであることなどだ。
先進国のデータを用いて実証分析をすると、通常は、金利の低下に一番大きな影響を与えるのはインフレ率の低下であり、財政収支の影響はごく小さいとなる(例えば、原田泰「『長期金利の謎』を解く」大和総研、07年5月9日)。ただし、不況になれば税収が減って財政赤字が増えるが、不況は投資需要を減らし、金利を下げる。したがって、財政赤字の増加と投資需要の減少が同時に起きて、金利が上がらないだけかもしれない。しかし、財政赤字の増大と同時に金利が下がるのであれば、あまり、心配しなくてもよいということかもしれない。
財政赤字ではなく、インフレ率の影響が大きいとすれば、金融政策が重要となる。日本銀行がデフレ目標政策を止めてインフレ目標政策に転じれば金利は上がる(「第6章2 日本銀行は何を目的としているのか」、原田泰『日本はなぜ貧しい人が多いのか』新潮社、2009年、参照)。これは物価が上がった結果として金利が上がるのであるから、名目GDPも増える。税収も増えるので、財政赤字は通常であれば減少する。ただし、国債の利払いは増える。だからデフレから脱却できないという人もいるが、これは国債の累積額が大きくなっているからだ。そもそも国債の累積額が小さいときにデフレから脱却していれば何も問題はなかった。
また、
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