松浦新
2011年06月11日
社会保障改革に関する集中検討会議は医療、介護、年金、消費税がテーマになっている。いずれも迫り来る超高齢社会への対応が念頭にある。ところが、医療・介護と年金は経済前提が違っている。なぜ、同じ日本の社会保障を違う経済前提で考えることができるのか。まさに「問題先送り」の体質がそこにある。
※本日6月11日付の朝日新聞朝刊別刷り「be」に掲載の「年金積立金が10年で枯渇する」もあわせてお読みください。
vol.1とvol.2を無料公開しています。
※「年金マガジンネット探検隊が行く」vol.1 改革は一体どこへ
※「年金マガジン-ネット探検隊が行く」vol.2年金の仕組みから理解しよう
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【ネット探検隊】 年金の現状や改革の方向性をネット上のデータを探索しながら明らかにしていく。隊長、隊員は以下の3名。
隊長:香川年男 1973年生まれの37歳。バブル崩壊後、阪神大震災の年に社会に出た。
隊員:本田景子 1985年生まれの25歳。リーマン・ショック前の平成ミニバブル期の採用。
隊員:岡崎金人 1947年生まれの63歳。団塊世代の先頭集団で、定年後も嘱託で働く。
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香川 前回は、検討会議の経済前提が2つあることを指摘しました。(1)医療・介護と(2)年金の前提です。(1)は今回作られたもので、今年1月に内閣府が公表した「経済財政の中長期試算」をもとにしています。(2)は09年1月に内閣府が公表した「経済財政の中長期方針と10年展望」がもとになっています。2年しかたっていませんが、(1)は民主党への政権交代直前に作られたものです。経済政策だって変わっているはずですから、せめて経済前提ぐらいはそろえてほしいですね。
岡崎 それだけ慌てて作った政策だということだろう。やっぱり「泥縄」だよね。将来の負担について論じるはずだから、経済前提ぐらいはしっかりしたものを作ってもらわないと、「2015年度の所要額」なんて言われても、まともに読む気がしないね。
本田 あきれた話ですけど、2つを比較してみました。
年金の経済前提である自民党時代のものを見ると、賃金上昇率は高めで、物価はなぜか2016年以降、安定します。医療・介護の前提である民主党になってからの推計は、物価も賃金も、足元は比較的低いのですが、将来にかけて上がることを見込んでいます。賃金も物価も下がらないのは共通で、高い上昇率を見込んでいる点は変わりませんが、民主党のほうがまだ、現実に近いように思えますね。
岡崎 でも、待ってくれよ。前回は、デフレの時にもマクロ経済スライドを適用するという話だったよな。これだったら、いずれの前提でも、そんなこと考える必要ないじゃないか。それと、賃金上昇率が物価を上回ることになっているけど、そんなハッピーなことばかりなのかなあ。
本田 いまの年金制度は、賃金が上がって、
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