藤井英彦
2011年06月18日
税と社会保障一体改革の議論が盛り上がっている。わが国は先進各国のなかでも政府債務残高の規模が際立って大きく、財政改革は焦眉の急だ。ベビーブーマーが年金世代に入るなか、総論として社会保障分野が改革の本丸である点に反対を唱える向きはなかろう。
しかし、各論に入ると異論が続出する。財政悪化を食い止めるには、税収にせよ社会保険料にせよ増収を図るか、サービスの合理化や見直しによって支出を削減しかないが、いずれも大きな痛みを伴うからだ。だからこそ今回、一体改革として議論が行われてきた。
医療や年金、介護をはじめ社会保障分野は多岐に亙る。地域間の差異も無視できない。実務に即した細かな検討が個別に不可欠である。しかし、ギリシャ情勢に象徴される通り、財政問題が焦点化するなか、個別の議論を一つひとつ決着させ、次いで財政全体の議論に移り、着実にステップを進めるスタイルでは時間切れになるリスクが増大した。一体改革の議論が必要になった所以だ。
それでも画餅の懸念は払拭されない。実体経済の論点が抜け落ちているからだ。わが国名目GDPは1997年度の514兆円をピークとして趨勢的に減少してきた。2010年度は476兆円となり、経済規模は474兆円だった20年前の1991年度並みまで縮小した。今後、生産年齢人口の減勢に拍車が掛かるなか、経済が拡大に向かうか否か不透明だ。
名目成長が実現できない限り、
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