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税と社会保障の一体改革案は実現しない方が良い

原田泰

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

 菅総理の言によれば、「50年後の安心」のために抜本改革を目指してきた「社会保障と税の一体改革」だったはずだが、そうはなっていない。社会保障改革に関する集中検討会議に提出された資料(2011年6月2日)によると、社会保障給付費は2011年度の108.1兆円から2025年度の151兆円に増大するが、対GDP比は22.3%から24.9%へと2.6%ポイント上昇するだけである。消費税1%でGDP0.5%分の税収だから、消費税を5%上げれば2025年の社会保障も安心できると言う訳だ(過去の財政赤字は考えていない)。

◇生産性の上昇を過大に見た推計◇

 しかし、社会保障給付比が1.397倍(151÷108.1)に増えるのに、どうしてGDP比で2.8%しか上らないのかと言えば、GDPが増えているからである。GDPは2011年の483.8兆円から2025年の607.4兆円と1.255倍に増えている。この間、生産年齢(15-64歳)人口は0.876倍に減っているから、生産年齢人口当たりのGDPは1.433倍になっている。

 こうなるためには、毎年、労働生産性が2.6%で伸びないといけない。これは非現実的な数字ではないだろうか。生産年齢人口当たりの実質GDPは、過去20年間、毎年1.2%でしか伸びていない。しかも、労働生産性が上っていれば当然給料が上っているはずだが、福祉に携わる人々の給料も年金も大して上げなくて良いという仮定を置いているようだ。

 2025年まで2.6%で労働生産性が上昇するとしても、

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