原真人
2011年06月23日
再生可能な自然エネルギー、たとえば太陽光や風力、地熱などのエネルギーコストはまだまだ高い。原子力や石炭火力などに比べ価格競争力に乏しいので、裸の競争では普及にどうしても限界がある。そこで自然エネルギー普及のために生み出された制度が、電力会社に対し自然エネルギーで発電した電力をすべて買い取ることを義務づける「固定価格全量買い取り制度」だ。
その全量買い取り制度を盛りこんだ「再生エネルギー法案」が、どうしたことか菅政権の命運を決めるカギになりつつある。菅首相が「辞任の条件」として、この法案成立を持ち出したからだ。首相自身は「独占的な電力業界に風穴をあける」「経済産業省と東京電力がオレを邪魔しようとしている」といって、抵抗勢力との闘いをイメージさせようとしているようだ。
どこかで見た光景のようでもある。そう、小泉純一郎首相が郵政民営化に反対する自民党内勢力を抵抗勢力と断じ、「どちらが正しいか国民に聞いてみたい」と郵政解散に打って出たときを思い出さなくもない。しかし、よくよく比べてみると、二人の「決断」が似て非なるものであることが分かる。
小泉元首相は、首相になる10年も前から「郵政民営化」を唱えてきた筋金入りの郵政改革論者だ。首相在任中もずっと、郵政民営化の実現に向けて閣僚人事をし、有識者懇談会をつくって着々と布石を打ってきた。官僚から政策の説明を受けているときに、興味がなく、うつらうつらしていたのに「郵政」という言葉が一瞬でも出てくると、はっと目覚めた、というエピソードさえある。
ところが、菅首相が再生エネ法案を政治問題にとりあげたことは、これまで一度としてなかった。それにこの法案はもともと国論を二分するようなテーマでもなく、
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