武田洋子
2011年07月07日
米国連邦準備銀行(FRB)は、総額6,000億ドルの中長期国債の追加購入策、いわゆる“QE2”を予定どおり6月末で終了した。
もっとも、6月21、22日に開催されたFOMCでは、保有証券の償還資金を国債へ再投資し続けることを決定しており、QE2終了後も、現行のFRBのバランスシート規模は維持される。FRBのバランスシート規模は、6月末で2.8兆ドルと対名目GDP比で18.8%にも達している。また、声明文には、異例に低いFFレートが「長期間にわたり(for an extended period)」正当化されるとの文言も残っており、基本的には超緩和的な政策が継続されることに変わりはない。
この半年超の間、QE2はどのような影響を及ぼしてきたであろうか。筆者は、良くも悪くも影響があらわれた側面と、ほとんど影響がみられなかった側面があったとみている。
影響があらわれた側面を一言で表すと、投資家のリスクテイク姿勢の前傾化(利回り追求の強まり)ということになろう。昨年夏以降の追加緩和期待とその後のQE2導入は、新興国市場や商品市場への資金流入の加速をもたらし、それが新興国経済の需要の強さと相俟って、新興国のインフレ圧力や国際的な商品価格の上昇基調を強めてきた可能性が指摘されている。
また、潤沢な資金は米株式市場にも流れ、株価の上昇を通じて消費拡大を促し、結果的に米国経済を支えてきた。米国では、所得階層の最上位20%による消費が、全体の約40%を占める。これらの階層は株式の保有比率も高いため、株価の上昇は資産効果を通じて、消費を喚起することに繋がった。昨年前半には、市場で米国経済の二番底入り懸念が強まる場面もみられたが、結果的には、ドル安と新興国経済の拡大持続による輸出の好調、さらにはGDPの7割を占める消費の堅調がこうした懸念を払拭した。
一方、QE2の効果が及ばなかったのが
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