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「東大秋入学」は日本を変えるか(上) 「タフな東大生」育成への期待

常見陽平

常見陽平 千葉商科大学国際教養部准教授 いしかわUIターン応援団長  社会格闘家

◇「秋入学」に驚いている場合じゃない◇

 「東大が秋入学を検討」していることが、話題になっている。メディアでは、特徴的な事象ばかりが話題になりがちだが、秋入学よりもむしろ、東大が打ち出している改革案にこそ注目すべきである。『行動シナリオ FOREST 2015』がそれだ。全部で106ページにも及ぶこの資料からは、21世紀を生き抜くための東大の本気と覚悟を感じる。

この資料では重点テーマとして

・東京大学の知の公共性と国際性

・知の共創―連環する大学の知と社会の知

・真の教養を備えたタフな学生

・活力のある卓越した教員

・高い能力と専門性を持つ職員

・機動力のある経営

をあげている。

さらに、重点テーマ別行動目標として、

1.学術の多様性の確保と卓越性の追求

2.グローバル・キャンパスの形成

3.社会連携の展開と挑戦―「知の還元」から「知の共創」へ

4.「タフな東大生」の育成

5.教員の教育力の向上、活力の維持

6.プロフェッショナルとしての職員の養成

7.卒業生との緊密なネットワークの形成

8.経営の機動性向上と基盤強化

9.ガバナンス、コンプライアンスの強化

 を掲げている。

 特に「グローバル化」こそ東大の存在意義、存続意義の大きな柱であり、東大の考えるグローバル化とは何かが明文化され、抜本的な改革をしなければそれは難しいのだと宣言されている点に注目したい。外国人留学生の割合を15%以上にする、日本人学生全員海外体験をさせる、外国人職員の割合やTOEIC800点以上の職員の増加などにも言及されており、秋入学同様に注目すべき点が多数ある。

 また、グローバル化と「タフな東大生」の育成という項目には納得がいく。採用活動の現場で出会う東大生たちには、2割ぐらいの学生に「さすが東大!」と唸る一方で、5割は無難な偏差値エリート、さらに3割はガラスのエリートだと感じてしまっているからだ。

◇注目され続ける東大生◇

 もちろん、大前提として、東大生が今も昔も新卒採用の世界で注目される存在であるという事実がある。特に理系の院生はそうだ。ウェブ系の新興企業は、彼らを採用するべく、躍起になっている。そのために、限定セミナーを開いたり、経営者が自ら口説いたりしている。外資系のコンサルティング会社や金融機関だってそうだ。

 最近、話題となったリクルーター制度復活も、

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