武田洋子
2011年07月27日
7月21日、ユーロ圏首脳会議はギリシャへの追加支援で合意した。ユーロ圏とIMFによる公的支援は1090億ユーロ、これに民間負担分の約500億ユーロを加えると、総額1600億ユーロにのぼる。
公的支援としては、ギリシャ政府への追加融資や、既存融資の返済期限の延長や金利負担の軽減に加え、ユーロ圏各国政府によるギリシャ国債への一定の保証が含まれた。民間負担については、債務交換や再投資、あるいはギリシャ政府による国債買い戻しに自発的に協力するというものである。
さらに、今回の支援の注目すべき点として、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の機能拡充がある。具体的には、(1)金融機関の資本増強のための域内政府への融資、(2)市場混乱時の流通市場における国債買い入れ、(3)予防的融資の制度など、他国への伝播や金融システム不安の広がりを抑制する機能が強化された。
つまり、今回の支援の枠組みは、単なる資金支援に止まらず、EFSFの予防的機能の強化を伴うものであり、当面の危機伝播の抑制になろう。また、格付け会社ムーディーズやフィッチは、民間負担の仕組みが発動されればギリシャ国債をデフォルトと見做すとしているが、支援策に一定の政府保証が含まれたことで、ECBはデフォルト認定後もギリシャ国債を担保に資金供給を続ける方針とみられ、事前に心配されていたギリシャの銀行の流動性危機も回避されるとみられる。
しかし、筆者は根本的な問題はなお解決していないと考える。なぜか。
第一に、ギリシャやポルトガルなど財政悪化国の再建の目途は立っていない。ドイツやフランス経済がプラスの成長を続ける一方、南欧諸国の経済はマイナス成長だ。緊縮政策に加え、財政再建への信認が得られずリスクプレミアムが増加し長期金利の上昇が続いていることも、
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