浜矩子
2011年07月28日
ルネ・マグリットという画家をご存知の読者は多いだろう。ベルギーが世界に誇るシュールレアリズム絵画の巨匠である。財政破綻寸前国家、ギリシャへのEUの支援態勢づくりのプロセスをみていたら、マグリット絵画のイメージが頭に浮かんだ。
マグリットの絵を観ていると、次第に軽いめまいを感じるようになる。馬上の男が森を行く。なんということのない情景だが、よくみると馬の脚が一本足りない。ありゃりゃと思いながら、少し船酔い感を感じるのである。
そうかと思えば、どこからみても立派なパイプの絵の下に「これはパイプではありません」などと脚注が施してあったりする。何がホントで何が幻想なのか解らない。確かさのない世界がマグリットの世界だ。
そして、それはギリシャ危機とそれを巡る欧州の支援構図の世界でもある。どこまでが実態でどこまでが体裁なのか。どこまでがミイラでどこからがミイラ取りなのか。それが判然としない。これはもう、どう考えても立派なデフォルトであるはずだ。そう思われる光景の下には、「これはデフォルトではありません。」と宣言した横断幕が貼り付けられている。
こんなに不安でシュールな状況を抱え込んで、EUは一体どこに行くつもりなのだろう。ギリシャを巡る取り繕いの世界は、
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