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牛肉汚染で失ったもの―農林水産省の罪と東電の大罪

山下一仁

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 稲わらを介して放射性セシウムに汚染された牛肉が流通した。

 農林水産省は東北や関東の畜産農家に対し、稲わらなどの飼料は事故の前に刈り取って屋内で保管されたものに限るよう、3月に通知していたという。しかし、汚染された稲わらを肉牛に与えていた農家は、この通知を知らなかったと報道されている。農業団体までの通知にとどまり、農家まで通知が届いていなかったようだ。しかも、稲わらを供給するコメ農家には通知さえ行われておらず、今回、福島県浅川町の畜産農家に稲わらを出荷したコメ農家の団体にも指導は行われていなかった。

 農林水産省が7月28日に公表した調査結果によれば、放射性セシウムで汚染された稲わらが、北海道や新潟、島根など16道県の170の肉牛農家で餌として使われていた。このうち14道県からこれらの稲わらを食べた2965頭が出荷された。宮城県の稲わらが北海道や島根県まで広域に流通していたのである。東北や関東の畜産農家に対してのみ行われた通知では、不十分だったのだ。コメ農家、東北や関東以外の畜産農家に対し、汚染された稲わらを生産・使用しないという指導は全く行われていなかったことになる。

 問題は、稲わらが畜産農家に供与され、しかも全国的に広範囲に流通していたことは、農林水産省の想定外として済まされるのかということである。

 実は、

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