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 〈第2回〉無駄な事業より個人に配るべき

 第1回では、東日本大震災からの復興に必要とされている予算19兆円~23兆円が大きすぎると指摘した。しかも、復興予算がやたらに大きくなるのは今回だけではない。なぜ、巨額の復興予算が使われるのかを考える前に、そもそもこれまで何をしてきたかを見ていこう。

 

◇奥尻でも阪神・淡路でも巨額の予算を使った◇

 1993年の北海道南西沖地震では、奥尻島に被害が集中し、人口約4,700人の島で、死者・行方不明者198人という大惨事となった。復興のために、200億円かけて、総延長14km、高さ11メートルの防潮堤、27億円かけて津波避難のための人工地盤-望海橋など、合わせて760億円の費用をかけた。うち、町の負担は160億円である。それでも、震災時405人いた漁業組合員は現在197人に(朝日新聞2011年5月30日)、人口は4,700人から3,160人に減った(町のホームページによる)。760億円の復興費を当時の島の人口4,700人で割ると一人当たり1,620万円になるが、それでも復興していない。町の負担だけでも1人340万円である。町財政が危機に陥るのも当然だ。

 1995年の阪神淡路大震災では、避難者数はピークで32万人だった。深刻な被災に遭われた方は40万人以下だったのではないか。阪神淡路大震災では、16兆円の復興経費をかけているので、一人当たり4,000万円の復興費となっている。

 日本人一人当たりの平均物的資産は975万円なのに、なぜ復興経費がこれほど大きくなるのか。もっとも被害を受けた神戸市の長田区に行ってみれば分かる。消防車も通れない住宅密集地域の道路を広げ、延焼を防ぐために公園を作り、耐火性の高い建物にするのは当然である。公園に鉄人28号の原寸大模型を置くのも良い。しかし、新たに建設した高層マンションと拡大した商業施設にテナントが入っていない。新長田駅近くの1階の商店街にはテナントが入っているが、地下や2階、駅から離れればほとんどシャッター通りになっている。地方の駅前通りなど、皆シャッター通りではないか、長田だけが失敗ではないと居直る方もいるかもしれない。

 しかし、他のシャッター通りは、戦後のある時期に栄えていた商店街が、社会経済状況の変化とともにやむなく衰退したのだ。ところが、長田区は、新たにシャッター通りどころが、ゴーストタウンを造ったのだ。ゴーストタウンの店舗一つに何千万円ずつかけていれば、1人4,600万円の復興費がかかったのも分かる。

 元々、長田区のこの地域は、ケミカルシューズの製造拠点で、人々は自ら所得を得、誇りを持って生きていた。機械の減価償却は終り、物価も家賃も安いので、所得は低くても生活することができていた。ところが、製造機械を失い、分散して住むことを余儀なくされた人々は、仕事を失い、困窮するか生活保護に頼らざるを得ない状況に陥った。

 道路と公園を確保して中層の耐火建築物を建て始めると同時に、中古機械を買い集め、バラック建設を許容してシューズ製造を開始していれば製造を続けることができたかもしれない。バラックから中層の防火住宅に順次移っていけばよかっただけだ。

 長田のゴーストタウンだけではない。阪神・淡路大震災の直後、神戸市長は、引き続き神戸空港の建設を進め、空港を「防災の拠点」と位置づけ、空港を復興の手段とした。空港建設費用は、空港関連施設用地の売却益をあてる予定だったが、ほとんど売れていない。神戸、関空、伊丹と関西圏の需要以上に空港があるという、いわゆる関西3空港問題の原因ともなっている。

◇復興の愚かさを認識すべき◇

 復旧より復興と言われるが、現実になされた復興の愚かさをこそ認識すべきではないだろうか。そもそも、 ・・・ログインして読む
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筆者

原田泰

原田泰(はらだ・ゆたか) 原田泰(早稲田大学教授)

 早稲田大学教授。1974年東京大学卒業後、同年経済企画庁入庁、経済企画庁国民生活調査課長、同海外調査課長、財務省財務総合政策研究所次長などを経て、2012年4月から現職。「日本はなぜ貧しい人が多いのか」「世界経済 同時危機」(共著)「日本国の原則」(石橋湛山賞受賞)「デフレはなぜ怖いのか」「長期不況の理論と実証』(浜田宏一氏他共著)など、著書多数。政府の研究会にも多数参加。

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