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米国発~財政落語の一席~

浜矩子

浜矩子 同志社大学大学院教授(国際経済学)

 米国の債務上限引き上げ問題に何とか決着がついた。決着ではある。だが解決ではない。それは誰の目にも明らかだ。

 さしあたり、債務不履行に陥ることは免れた。新たな赤字削減の誓約と引き換えに、借金余力の天井を引き上げてもらえたからだ。要するに、借金を返すために新たな借金を重ねることが、もうしばらくの間許されるというわけだ。このことのどこにも、問題の解決と言える要素はない。

 財政再建面では、当初1兆ドル、その後さらに1.5兆ドルを積み増して、計2.5兆ドルの赤字削減を実現するという。だが、それは向こう10年間をかけての話だ。その間に政策責任者と上下両院議員たちの顔ぶれは変わって行く。年々の政治的駆け引きの中で、どこまで、約束が忠実に履行されるか、保障の限りではない。そもそも、歳出入のどのような数字を出発点として赤字削減を目指すのかについても、実をいえば良く解らない。全てがかなりモヤモヤしているのである。

 このモヤモヤ性がそもそも問題だが、もう一つ、別の厄介な問題がある。それは、モヤモヤしつつもそれなりに財政の緊縮化が進んだ場合、そのこと自体がアメリカ経済に対してデフレ効果を及ぼすという点である。これまでは、

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