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 米国の債務上限引き上げ問題に何とか決着がついた。決着ではある。だが解決ではない。それは誰の目にも明らかだ。

 さしあたり、債務不履行に陥ることは免れた。新たな赤字削減の誓約と引き換えに、借金余力の天井を引き上げてもらえたからだ。要するに、借金を返すために新たな借金を重ねることが、もうしばらくの間許されるというわけだ。このことのどこにも、問題の解決と言える要素はない。

 財政再建面では、当初1兆ドル、その後さらに1.5兆ドルを積み増して、計2.5兆ドルの赤字削減を実現するという。だが、それは向こう10年間をかけての話だ。その間に政策責任者と上下両院議員たちの顔ぶれは変わって行く。年々の政治的駆け引きの中で、どこまで、約束が忠実に履行されるか、保障の限りではない。そもそも、歳出入のどのような数字を出発点として赤字削減を目指すのかについても、実をいえば良く解らない。全てがかなりモヤモヤしているのである。

 このモヤモヤ性がそもそも問題だが、もう一つ、別の厄介な問題がある。それは、モヤモヤしつつもそれなりに財政の緊縮化が進んだ場合、そのこと自体がアメリカ経済に対してデフレ効果を及ぼすという点である。これまでは、

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筆者

浜矩子

浜矩子(はま・のりこ) 同志社大学大学院教授(国際経済学)

同志社大学大学院ビジネス研究科教授。エコノミスト。専門は国際経済学。1952年8月3日東京都生まれ。1975年一橋大学卒業、三菱総合研究所入社。90年より98年まで同社初代ロンドン駐在員事務所長。帰国後、同社経済調査部長、政策経済研究センター主席研究員を経て2002年10月より現職。「グローバル恐慌~金融暴走時代の果てに~」(岩波新書、2009年)、「ユーロが世界経済を消滅させる日」(フォレスト出版、2010年)など、著書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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