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菅政権には、したいことの政策化が欠けていた

原田泰

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

●反米主義、反ビジネス主義を止めたこと

 菅政権は極めて評判が悪い政権だったが、私はそれほど悪いと思っていない。政権交代の高揚感で、なんでもできると思った鳩山政権が、汎アジア主義、反米主義、反ビジネス主義でつまずいた後、菅政権は、それらを止めようと思ったはずだ。汎アジア主義、反米主義の停止は、尖閣列島での中国漁船衝突事件を経験する前からそう考えていただろうし、その後にはさらにその考えを固めただろう。自国の原発事故処理もできない国に、反米の選択肢はない。尖閣問題は、台頭する中国とどう向き合うかという難しい問題を提起されたわけで、菅内閣の対応はお粗末だったが、ではどうしたらよかったのか。日本のエリートが真剣に考えているように思えないのは心配である。

 成長戦略の一環として法人税減税を行おうとしたこと、TPP(環太平洋経済連携協定)に参加しようとしたのは良かったが、東日本大震災の発生で挫折してしまった。もともと、反対を押し切ってまで行おうという迫力はなく、反ビジネス路線を明確に否定し、日本経済は世界とともに生きていくしかないというメッセージを送ることはできなかった。

 いずれにしろ、民主党政権の挫折によって、日本が生き抜いていくために、反米も反ビジネスという選択肢もないと明らかになったのは良かったのではないだろうか。これは日本の政治を安定させるために重要なことである。

●怨念の政治を理解できなかった

 菅総理の最大の失敗は、

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