茂木崇(もぎ・たかし) ニューヨーク・メディア文化研究者
東京工芸大学専任講師。1970年生まれ。東京大学大学院博士課程修了。専門はマス・コミュニケーション論、アーツ・マネジメント論で、守備範囲はニューヨークの新聞、雑誌、出版、テレビ、デジタルメディア、広告、音楽、ブロードウェイ。共著に『コミュニケーションの政治学』(慶應義塾大学出版会)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
茂木崇
デジタルの時代になり、既存のジャーナリズムの多くで経営が行き詰っている。
アナログの時代には、既存ジャーナリズムは参入障壁を築くことに成功したため、少数の情報の送り手対多数の情報の受け手という図式が成立していた。新聞産業は輪転機と宅配網により参入障壁を築いた。テレビ局は電波が希少であるため免許制で、ライバル局が続々と増えることはない。このため、既存のジャーナリズムは大きな利益を上げることができた。
だが、デジタルの時代になり、情報の発信はわずかなコストで簡単にできるようになった。メール、ホームページ、ブログ、フェイスブック、ツイッターなどなど、今や誰でも気軽に情報を発信できる。このため、情報の需給のバランスが崩れて情報の価格は安くなり、既存ジャーナリズムが利益を上げるのは難しくなった。
これまでのビジネスモデルにしがみついていれば、自滅が訪れるのを待つばかりになる。そこで、欧米ではアントレプレニュリアル・ジャーナリズムという考え方が現れている。技術を駆使し、起業家精神を発揮して新しいジャーナリズムのあり方を