原田泰
2011年09月30日
アメリカの大胆な金融緩和にもかかわらず、アメリカ経済は急速な回復を遂げていない。だから、金融緩和は効果がないのだという議論がある。この議論の含意は、だから、日本が大胆な金融緩和をしても効果がなく、ほとんど緩和をしていない日本の金融政策は正しかったのだということになる。本当だろうか。
■アメリカ経済の回復は確かに遅い
アメリカ経済がこれまでの景気回復パターンに比べて順調に回復していないのは事実である。アメリカでは戦後、1945年10月、49年10月、54年5月、58年4月、61年2月、70年11月、75年3月、80年7月、82年11月、91年3月、2001年11月、09年6月を底とする11の景気循環があった。これらの底の時点に一番近い四半期のGDPを100として、その前後2年間の動きを見たのが、図1と図2である(1945年からの四半期GDPのデータはないので図示していない)。図1では、49年から61年と80年と09年のGDPを、図2は75年から09年までのGDPを見ている。図を分けたのは、線が重ならず、見やすくするためである。両図とも、比較しやすくするために、80年7月と09年6月を底とするGDPを示している。
図1を見ると、09年3月からの景気回復は、80年7月を底とする景気回復を例外として、他のいずれの景気回復よりも回復速度が遅い。図2でも、同じことが言える。すなわち、今回の景気回復は80年以外のいずれの回復時よりも回復速度が遅いのである。しかも、今回の景気は落ち込みが大きい。大きく落ち込んで、しかも回復が遅いので、国民の苛立ちが募っているのだろう。景気回復後2年たって、それ以前のピークに達していないのは、今回の不況と80年の不況しかない。80年11月に2期目の大統領選を戦ったカーター大統領は、レーガン共和党候補に4,390万票対3,548万票という大差で敗北し、再選できなかった。オバマ大統領が1期だけの大統領になるのではないかと心配されているのも理解できる。
■日本の回復はアメリカよりも遅い
確かに、大胆な金融緩和にもかかわらず、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください