2011年10月04日
欧州の経済は今年前半まで、PIGSといわれる弱い周辺国と、比較的好調な主要国とに2極化していた。しかし最近はフランスなどトリプルAの高い格付けを持つ政府への信認が低下し、ユーロ圏全体の景気後退が懸念され、ユーロ安が進んでいる。主要国へのリスクの波及には、欧州の銀行業界が抱える問題が影響している。
■ソブリンリスクの伝播の経路
欧州の銀行は、ギリシャなど高債務国向けに多額の与信を持っている。今年7月に、ギリシャの国債については投資家に実質的な損失負担を求めることが決定されたため、他の高債務国についても損失の発生が懸念されることになった。問題がスペイン、イタリアにまで波及すると、経済規模や、発行する債券の金額が大きいため、影響は深刻となる。例えばフランス、ドイツ、ベネルクスの銀行が保有するギリシャ、ポルトガル、アイルランドの国債は364億ユーロに上るが、スペイン、イタリアを含めると1,772億ユーロとなる。
IMFは9月の国際金融安定性報告書の中で、危機国国債の保有に伴う潜在的な損失はEUの銀行部門全体で2000億ユーロと推計しているが、投資家の不安は、国債の損失が大きい銀行向けの与信額にまで拡大している。銀行は自国の国債を多額に保有しており、金融不安の下では、国債を担保にECBから資金を調達するためその比率はさらに上昇する。
前述した、フランス、ドイツ、ベネルクスの銀行について、高債務国の政府向け与信にその国の銀行を加えると、与信額は8,555億ユーロと4倍に膨らむ。
欧州の銀行は貸し出しに比べて預金が少ないため、インターバンク市場への依存が高い。またユーロ統合以降、クロスボーダーの取引が活発化していたが、これは、リスクの伝播を強める結果となった。
欧州の銀行の調達コストはリーマンショック後よりも高い水準にあるが、これは投資家の銀行業界全体への不安を反映している。
■銀行の問題はソブリン格付けに影響を与える
以上のような銀行の問題は、貸し出しの抑制や金利上昇を通じて景気回復を遅らせ、
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