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馬脚を現した「TPP=アメリカ陰謀説」

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 日本のTPPへの参加で大きな利益を受けると思われているアメリカ農業界の受け止め方はどうなのだろうか?

 実は、日本のTPP参加表明で喜んでいるのはアメリカ農業界の一部だけである。牛肉や豚肉などの食肉業界は歓迎している。しかし、アメリカ最大の農産物であるトウモロコシや大豆は既に関税なしで日本に輸出しているので、日本がTPPに参加しても何も変わらない。トウモロコシ等は家畜のエサなので、TPPで牛肉や豚肉の対日輸出が増え、日本の畜産物生産が減少すると、トウモロコシ等の対日輸出は減少する。つまり、差し引きすると、食肉業界の付加価値分しか対日輸出は増えない。

 乳製品についてアメリカは競争力がないので、TPPで豪州、ニュージーランドからアメリカ市場への輸入が増大する。日本へ輸出するどころではない。このため、アメリカの酪農団体はTPP反対を表明している。アメリカ農産品団体のうち、議会への献金額の66%を占める砂糖業界は、豪州とのFTA(自由貿易協定)で砂糖を関税撤廃の例外としたことをTPPでも維持しようとして躍起になっているような状況で、そもそも国際競争力がない。ちなみに、次に献金額が多いのは、綿花(7%)、コメ(7%)である。

 アメリカの小麦やコメの対日輸出は、

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