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「逃げ水年金」とさるかに合戦

松浦新 朝日新聞経済部記者

 猿が柿を食べ終わったところに、かにがおにぎりを持って歩いてきた。手の中に残っている柿の種を見て思いついた猿が、かにに声をかけた。

 「おにぎりは食べたらおしまいだけど、この種をまけば、おいしい柿がいっぱい取れるよ。交換しないかい」

 ご存じ、さるかに合戦だが、私は、いまの年金制度はこの昔話になぞらえることができると思っている。

 柿の種(年金)は、いまは食べられないが、大切に育てればいずれ実をつける。だから、おにぎり(保険料)と交換しよう。きっと君たちが年をとったらいっぱい実をつけて、たくさん食べられる。いまは我慢が大切だよ。

 「100年安心」をうたった2004年の年金改革が、たった7年で国民を不安に陥れている。年金支給年齢を68歳に再引き上げしようという「逃げ水年金」の問題は、その象徴でしかない。狡猾なさるであればこう言うのかもしれない。

「そろそろ実がなるはずだったのに、おかしいなあ。もうちょっとがんばってみようか」

 しかし、だまされてはいけない。さるかに合戦では、

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