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 20日、政府の「食と農林漁業の再生実現会議」が農業再生基本方針案をまとめた。農地の出し手に協力金を出して、水田農業の規模を今の10倍の20~30ヘクタールに拡大するのだという。野田首相は、会議の冒頭で「(TPPなどの)経済連携と農業再生は両立できるか、できないかではなく、(両立)しなければならない」と強調した。

拡大「食と農林漁業の再生実現会議」であいさつする野田佳彦首相。左は鹿野道彦農水相=10月20日午後、首相官邸、仙波理撮影

 しかし、これはTPP参加の後押しになるものではない。筒井農林水産副大臣は、「基本方針案はTPP参加を見据えたものではなく、別個のものであると(同再生実現会議で)確認された」と会議終了後の記者会見で強調した。これは、鹿野農林水産大臣など農林水産省がこれまで強調してきたことだ。

 しかも、単に農林水産省の思い入れだけではない。この基本方針案自体がTPPなどの貿易自由化と相いれないからだ。関税は独占(カルテル)の母という経済学の言葉がある。今の米価1万3千円は減反という供給制限カルテルで高く維持されている。関税がなくなり、外国から1万円で米が輸入されるようになれば、この米価は維持できなくなる。

 つまり、TPPに参加するということは、

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。20年東京大学公共政策大学院客員教授。「いま蘇る柳田國男の農政改革」「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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