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拡がるアメリカ市民運動

藤井英彦

藤井英彦 株式会社日本総合研究所 調査部長/チーフエコノミスト

 先月、ニューヨーク・ウォール街で始まった市民運動は全米各地に飛び火し、未だ終息に向かう兆しはみられない。運動には多くの人が参加しており、主張は必ずしも一様でない。そうしたなか、“We are the 99%”のスローガンが広く知られるようになり、貧富の格差に対する抗議と捉える見方も増えてきた。

 しかし、貧富の格差だけでは説明力に欠ける。例えば、所得分布の歪みを示すジニ係数をみよう。同係数は、第一次石油危機以降、数十年にわたって上昇してきたが、大幅な上昇は90年代半ばまでで、その後の上昇は緩慢だ。直近5年間をみても、2006年の0.470から翌年0.463に低下し、その後3年間にわたって上昇したものの、10年でも0.469に過ぎない。91年の0.428から96年の0.455へ急上昇した局面とは様変わりだ。

 むしろ所得の減少に着目すべきだろう。個人一人ひとり、家計一つひとつが豊かになるのであれば、

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