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欧州危機の安全網を支える日本人

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 European Financial Stability Facility(略称EFSF)。日本では、欧州金融安定基金、欧州金融安定ファシリティーなどと訳されている。メディア、エコノミストの間でも訳語がばらつくのは、この言葉の新しさを如実に示している。EFSFは2013年半ばには恒久的な支援制度の欧州安定メカニズム(ESM)に移行する方針で、ユーロの財政的な統合を深化させるだろう。

 ギリシャなどユーロ圏の債務問題を解決する特別目的会社(SPV)である。EFSFはすでに3回にわたり合計130億ユーロの債券を発行し、ユーロ圏を除けば日本が主要な投資家で、日本の個人投資家が銀行や証券会社などで買える投資信託のポートフォリオの一部にも組み込まれ始めている。地域別にみた投資家の割合は、ユーロ圏が38%、日本が22%、日本を除くアジアが18%、英国が10%などとなっている(図表1)。米国を含む米州は3%に過ぎない。米国や英国より、日本を含むアジアがEFSFを支えていることになる。その意味では、欧州債務危機は他人事の危機ではない。

 EFSF債の利回りは10年債で3・375%、5年債で2・75%と、為替変動を気にしないのならば、日本国債より投資妙味が大きい。日本国債の場合、10年債で1%台前半、5年債は0・5%未満の水準にある。

欧州合意後、日中を訪問したEFSF長官

 EFSFのレグリング最高経営責任者(CEO)は10月28日、中国を訪問し、中国人民銀行や財政省の高官などと協議した。レグリング氏の訪中は、ユーロ圏首脳がEFSF強化策を含む債務危機の包括的戦略で合意した翌日という絶妙のタイミングだった。

 レグリング氏は記者会見で、

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