メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

震災復興の今こそまともな派遣法を

竹信三恵子 ジャーナリスト、和光大学名誉教授

 労働者派遣法改正案が大幅修正されて、今国会で成立する可能性が強いという。改正の核だった登録型派遣と製造業派遣の原則禁止が削られ、日雇派遣の禁止が緩和され、偽装請負などの違法派遣があった場合に派遣先企業が労働者に直接雇用を申し込んだとみなす「みなし雇用制度」の導入を3年延期するというものだ。残ったのは、派遣料金と派遣労働者の賃金との差額の比率であるマージン率を明らかにする情報開示の義務付けだけ。マージン規制ではないから、これも派遣社員の待遇をすぐ改善するものではない。

 連合の古賀会長も、「国会情勢が厳しい中で、法案がたなざらしにされるより、一歩でも二歩でも進める取り組みを求めており、残念だが苦渋の選択として受け止める必要がある」と、修正を受け入れる構えと報じられている。

 だが、この修正は、「一歩でも二歩でも進める取り組み」なのだろうか。

 派遣労働は、勤め先と雇う会社が切り離されているため、労働条件の改善を直接、勤め先と交渉できない。ある意味、すべての働き手に保障されているはずの基本的な労働の権利からこぼれてしまいがちな働き方だ。中でも登録型派遣は、派遣先の仕事がなくなった段階で派遣元との契約関係も切れるという極めて不安定な働き方だ。ドイツでは、派遣先の仕事がなくなっても派遣会社が自社の社員として雇用を続ける常用型派遣が原則で、安定度は格段に高い。

 フランスは、日本の登録型派遣に近い仕組みだが、派遣される場合は前任者の正社員と同等の待遇が義務付けられている。このため、派遣社員の賃金を押し下げて派遣会社が利益を増やすことが難しい。さらに、正社員にかかるコストに派遣会社の経費や利益が上乗せされる形になり、派遣労働が正社員を押しのけて野放図に増える事態を防ぐ効果がある。

 日本の派遣労働は、こうした派遣社員への安定装置がほとんどなく、

・・・ログインして読む
(残り:約1094文字/本文:約1869文字)