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狭い国土を生かした“農業ビジネス”の強み

青山浩子 農業ジャーナリスト

 TPP参加を前提に、規模拡大が叫ばれる日本の農業。「一戸あたりの面積が狭く、兼業農家が多い日本の農業は国際競争で圧倒的に不利」という前提がある。しかし日本の農業は本当に不利なのか。農業を軸にした加工や直売、観光といった“農村ビジネス”という点ではこんなに有利な条件を備えた国はない。

拡大人口6千人の村の農業発信拠点となっている直売所「あすか夢販売所」=奈良県明日香村

 農村を回っていると、酪農家が運営する搾りたての牛乳を使ったジェラートショップにたびたび出くわす。人気店になると年間に10万人、20万人が訪れるという。

 ジェラート一人分で350円~400円。コンビニのアイスクリームと比べ値は高い。それでも客が来る理由は、新鮮な牛乳から作ったジェラートはおいしいからだ。フレーバーに使うイチゴやみかんといった果物も完熟した果物を使っており、おいしさはさらにアップする。大手企業には真似ができない商品だ。

 単価に来客人数をかけると6000~7000万円の売上げになる。機械の償却費や人件費を差し引かねばならないが利益は残る。しかもジェラートビジネスは酪農家にとって副業。本業の酪農による収入もある。

 ジェラートだけではない。手づくりののり巻きだけで年商1億円を稼ぐ女性グループ、農家レストランと惣菜や菓子など農産加工で6000万円以上を売り上げる女性農家もいる。農産物を生産するだけでなく加工、販売まで広げたり、これがきっかけで観光客を呼び込む“農村ビジネス”を通じ、農業を儲かる産業に変えた農業者は全国に多い。

 農村ビジネスは立地をあまり問わない。「こんなひなびたところで商売が成り立つのか」と思う場所でも、ニーズに沿った商品を提供している場所には人が来る。

 国土が狭く、農村と都市が混在している日本だから成り立つビジネスだ。どんなに静かな農村地帯でも1時間もすれば地方都市の市街地に出られる。逆に都市からも1時間で田舎にいける。だからアイスクリームも売れるし、のり巻きも売れる。

 その上、日本人は食べ物に弱い。テレビやインターネットで「おいしい」という情報が流れるとガソリン代を使ってでも400円のジェラートを食べに来る。

 おもしろいことに日本より国土の狭い韓国では、 ・・・ログインして読む
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筆者

青山浩子

青山浩子(あおやま・ひろこ) 農業ジャーナリスト

1963年愛知県生まれ。86年京都外国語大学英米語学科卒業。JTB勤務を経て、90年から1年間、韓国延世大学に留学。帰国後、韓国系商社であるハンファジャパン、船井総合研究所に勤務。99年より農業関係のジャーナリストとして活動中。1年の半分を農村での取材にあて、奮闘する農家の姿を紹介している。農業関連の月刊誌、新聞などに連載。著書に「強い農業をつくる」「『農』が変える食ビジネス」(日本経済新聞出版社)「農産物のダイレクト販売」(共著、ベネット)などがある。茨城大学農学部非常勤講師もつとめる。

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