2011年11月30日
ブータン国王夫妻の来日・新婚旅行が人々の関心を集めたのは、二人の優しい笑顔とか、テレビが繰り返し放映したせいばかりではない。「GDP(国内総生産)ではかる豊かさや、経済成長が、どうもおかしい」「もっと生活実感に近い尺度はないのか」「豊かさの本当の尺度をつくるべきではないか」といった疑問が、巷に渦巻いているからではないか。
大震災で見えた原発推進のあやうさ、効率優先のシステムのもろさ。GDP統計で見る経済は回復してきたというのに、この寒々とした雇用情勢はどうだろう…。そうしたさまざまの現実が、もはやGDPで経済を語ってすますわけにはいかなくなったことを示してはいないだろうか。そんな気分の日本であればこそ、「GDH」(あるいはGNH・国民総幸福量)という尺度で国造りをすすめているというブータンが、やけに新鮮にうつったのではあるまいか。いいかえれば、かの国をよけいにさわやかな存在として感じるのは、日本が閉塞状況にあることの反映なのだ。
そう書いてみると、ここで先輩の朝日新聞記者たちも、ずうっとこの問題と格闘してきたことにふれざるを得ない。そのシンボリックな仕事こそ、「くたばれGNP(国民総生産)-高度経済成長の内幕」という朝日新聞の連載であった。1970年5月から2ページに拡大した朝日新聞経済面の目玉企画。これに先立ち、
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