【退任】週刊紙「アエラ」前編集長。1956年生まれ。78年朝日新聞社に入り、経済部記者、「アエラ」編集部員などを経て、2000年「アエラ」編集長。beエディター、出版本部長補佐などを経て、08年10月から「報道ステーション」コメンテーターを務めた。「アエラ」副編集長時代には、中吊り広告下の一行コピーを担当。2012年1月まで「WEBRONZA」編集長。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
「経済成長は手段であって、国の目的は人々の幸せ」なんてことは、言われなくてもわかっている。でも、幸せは数字で表せないので、手段である経済成長を目的であるかのように扱わざるを得ない。これが多くの先進国のこれまでの常識だったと思う。
ブータンがすごいのは、そんな常識に目もくれず、国の目的を国民総幸福量の増大とうたって、きっちり指標化していることだ。そして、それを掲げて国が実によく治まっていることだ。
ただ、ブータンのやり方を日本にそのまま持ち込めるかというと、そういうものではなさそうだ。指標は「基本的な生活」「環境」「健康」など9つあり、合計72項目の質問を面談ですることによって数値化されている。質問を見れば、今の日本にはとてもなじまないものが多い。例えば、基本的な生活の中の質問を見ると「日常生活のなかで、カルマについて考えますか」という項目がある。
カルマとは仏教用語で「業」のことだが、これは「考える人」が幸福で「考えない人」は不幸に色分けされるようだ。敬虔な仏教国ならではの指標だ。健康の質問では「子どもはどれくらいの期間、母乳で育てられるべきですか」とあるが、これは長い期間を答えるほど幸せに方向付けされるようだ。日本でこうした質問と解釈をすると、抗議が殺到するのは間違いない。
文化では「この1年でどれくらいの頻度で伝統的なスポーツをしましたか」という質問がある。これも頻度が多ければ多いほど幸せ方向になるようだが、