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広がる所得格差、どこへ行く資本主義

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 年末になると、3年前に起きた製造業の「派遣切り」を思い出す。

 

 リーマンショックで打撃を受けた製造業の派遣社員が大量解雇され、寒空の公園に食物を求める行列ができた。それは「総中流」と言われてきた日本社会の裏側でいつの間にか格差が広がり、ついに隠し切れなくなって表に露出した姿だった。いま先進国を中心に非正規労働(契約社員・パート・派遣など)が増え、所得格差が拡がって貧困世代の再生産が起きている。

派遣村の入村手続き窓口には行列ができた=2008年12月31日午前、東京・日比谷公園、杉本康弘撮影

 世界の飢餓人口も増えている。資本主義のグローバル化や金融化、IT化がもたらした現実だ。東西冷戦の終結以来、世界を豊かにすると思われた資本主義の行き先に誰もが不安を抱いている。人類社会はその方向を正すことはできるのだろうか。

 

 労働者にとって非正規労働は働き方の選択肢を広げる意味で本来は有用な仕組みであったはずだ。日本では外国に比べて閉鎖的だった労働市場を活性化する役目を果たしてきた。たとえば世間に評判の悪い「日雇い派遣」。空き時間のある日を活用したい学生や副業を希望するサラリーマンに人気があり、企業側も毎日の仕事量の増減に応じて人を雇えるのでとても便利な制度である。

 

 しかし、派遣をはじめ非正規労働は人件費削減の格好の手段として産業界が最大限活用したことで歪みを生じた。それは1995年に日本経営者団体連盟(日経連)が「新時代の日本的経営」と題する文書を発表したことが一つのきっかけになった。

 

 この文書は、企業の従業員を「長期蓄積能力活用型」「高度専門能力活用型」「雇用柔軟型」の3グループに分類。「長期蓄積能力活用型」の正社員には人材教育や能力開発を施す一方、「雇用柔軟型」(派遣・契約・パート社員)は時間給で昇給しないグループとし、コスト削減のために大量活用する方針を打ち出した。

 

 企業はこの路線に沿って社員の非正規化を進め、グローバルなコスト競争に臨んだ。非正規労働者が雇用の調節弁となったので、正社員は解雇されなくなり、組合運動は穏健になった。日経連は2002年、「その役目を終えた」として経団連に統合された。

 

 この1990~2000年代は、世界では東西冷戦が終わって中国やインドが改革開放経済に舵を切った時期で、インターネットが普及して高度成長路線への転換を遂げつつあった。

 

 なかでも中国は2001年にWTO(世界貿易機関)に加盟し、外資導入政策によって「世界の製造基地」として大発展を遂げた。日本の製造業は安い中国製品に圧迫され、2004年には小泉内閣が「製造業派遣」の解禁に踏み切った。

 

 こうして「雇用柔軟型」が浸透した結果、

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