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 2012年の経済を展望するうえで、まず鍵を握るのは欧州債務危機の帰趨であろう。筆者は、ユーロ崩壊は回避されると考えている。ユーロ誕生までの歴史的な経緯、新興国の台頭など国際的なパワーバランスの状況、ユーロ崩壊に伴う経済的打撃の大きさなどを踏まえれば、独仏はユーロを死守せざるを得ないはずだ。

 しかし、抜本的な解決への道のりは長い。「一つの通貨・金融政策とバラバラな財政政策」というシステムの欠陥を改良する必要がある。一方で国家と財政主権は表裏一体であり、完全な財政統合も現実的とはいえない。

 解決には、一定のルールの下での財政移転機能の強化とガバナンスの改善に加え、南欧諸国の生産性向上が必要であるため、出口までには長期間を要しよう。したがって、標準シナリオでは、2012年も信用不安は燻り続けると予想する。

 こうしたなか、2012年の日本経済は、東日本大震災が発生した2011年より成長率を高めるが、震災直後に想定していたよりも緩慢な回復(実質GDP成長率では1.8%程度)にとどまると予想する。復興需要が成長を押し上げることが期待される一方、日本を取り巻く外部環境の悪化が下押し圧力となるためだ。

 2011年、月を追うごとに深刻の度を増した欧州債務危機は、既に3つの経路―(1)金融市場、(2)金融システム(欧州系銀行による世界の資産圧縮)、(3)輸出(海外現地法人からの間接的な輸出も含む)―を通じて日本経済に負の影響を及ぼし始めている。来年も信用不安が燻り続けるとの見通しを前提とすれば、こうした負の影響は続くと考えざるを得ない。

 もっとも世界経済全体としてみれば2011年比減速しつつも成長を持続すると予想する。標準シナリオでは、欧州経済はゼロ近傍の低成長にとどまる一方、米国経済は緩慢な成長を続け、新興国経済も緩やかに減速はするが失速は回避するとみているためだ。

 しかし、欧州債務危機の展開次第では、次の2つのリスクシナリオが考えられる。

 第一に、世界的な金融危機は回避したとしても世界経済が急減速するシナリオだ。欧州では、明確に財政・金融・経済の負の連鎖が強まっており、それらの相乗作用によって、深いリセッションに陥るリスクが高まっている。また、米国経済もバランスシート調整が続くなど、経済のファンダメンタルズはなお脆弱だ。

 今後、欧州債務危機による影響が想定以上に表面化する可能性は否定できない。来年の大統領選を控え、民主・共和党間の政治的対立が強まることも懸念される。財政再建に向けた取り組みが頓挫すれば、市場を一段と不安定化させ実体経済にも負の影響を与えよう。

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筆者

武田洋子

武田洋子(たけだ・ようこ) 三菱総合研究所チーフエコノミスト

【退任】三菱総合研究所 政策経済・研究センター チーフエコノミスト。東京都生まれ。ジョージタウン大学公共政策大学院修士課程修了。94年に日本銀行入行後、海外経済の分析、外貨準備の運用、内外金融市場のモニタリング・分析、外国為替市場における平衡操作担当などを歴任。09年4月より現職。専門は国際金融、マクロ経済、公共政策。

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