小此木潔(おこのぎ・きよし) ジャーナリスト、元上智大学教授
群馬県生まれ。1975年朝日新聞入社。経済部員、ニューヨーク支局員などを経て、論説委員、編集委員を務めた。2014~22年3月、上智大学教授(政策ジャーナリズム論)。著書に『財政構造改革』『消費税をどうするか』(いずれも岩波新書)、『デフレ論争のABC』(岩波ブックレット)など。監訳書に『危機と決断―バーナンキ回顧録』(角川書店)。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
世界経済はデフレあるいはへたをすると恐慌への転落の道を歩む危険がある。それを防げるかどうかは1年がたってみないとわからないだろう。
IMFやOECDが世界全体の成長率を3~4%と予測しているのは、これまでの1年間の実績をそのまま将来に引き延ばして希望的観測と混ぜ合わせたようなもので、あてにならない。せいぜいのところそれは、大きなショックが何も起こらずに1年がすぎたばあいの楽観的なシナリオにすぎない。
世界経済の2012年について展望するとき、目の前に存在しているリスクあるいはこれから生起する可能性のあるリスクについて十分に考慮することは当然だ。そのリスクの主なものとは、いうまでもなく(1)欧州危機の深刻化(2)米国経済の悪化(3)中国など新興国経済の失速、である。
欧州の場合、ギリシャ、イタリアの財政・経済再建や欧州中央銀行(ECB)あるいは欧州安定化基金(EFSF)による危機収拾策の限界が再び露呈するのは時間の問題と考えねばならない。というのは、南欧諸国の財政危機の本質は、たんなる放漫財政ではなく、金融の規制緩和・バブルが引き起こした世界的ブームとその崩壊が背景にあり、ユーロ圏の成立にともなう北欧企業との競争に破れた結果としての経常収支の悪化によるところが大きいと考えられるからである。
言い換えれば、欧州危機の解決とは、たんなる緊縮財政ではありえないし、
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