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今後も格下げリスクが残る欧州のソブリン

根本直子

根本直子 早稲田大学 大学院経営管理研究科 教授/アジア開発銀行研究所、 エコノミスト

 欧州のソブリン格下げはおおむね想定範囲といえるが、スペイン、イタリアは2ノッチの格下げとなり、同国の銀行の信用収縮や経済の悪化につながるおそれがある。また、ドイツ、スロバキアを除く14カ国はアウトルックがネガティブであり、1~2年内に格付けが下がる可能性が相対的に高い。信用力を改善させるには、市場の不安を抑えるような結束の強化と、周辺国の競争力を高める政策が必要だが、安定化の道筋は見えてこない。

イタリア、スペインは2ノッチの格下げ

 格付けの変更は、ユーロ加盟国の信用力の格差を拡大させた。昨年12月に、格付けの見直しのためにクレジットウオッチに掲載された16カ国のうち、今回格下げとなったのは9カ国で、残り7カ国は格付けが維持された。ドイツ、フィンランド、オランダなどはトリプルAの格付けを維持しており、これは相対的に健全な財政や経常収支の黒字を反映している。

 主要国であるフランスはAA+に格下げとなったが、同国のクレジットデフォルトスワップ(CDS)が、格付けのより低い日本(AA-)を上回っていることを勘案すると、市場指標に比べて格付けの水準は依然高いともいえる。

 一方で、イタリア、スペインは2ノッチの格下げとなった。格下げが大きい理由は、政府や金融機関の海外からの借り入れが大きく、流動性のリスクが高まっているためである。イタリアの新たな格付けはBBB+であり、G7の国がトリプルBレンジとなったのは初めてといえる。

 銀行の格付けは、原則としてソブリンを上回ることはできないため、今後、スペインやイタリアの高格付けの銀行は連動して格下げとなり、海外からの資金調達コストが上昇し、信用収縮が国内の経済に影響を与える可能性がある。

 格下げになったとはいえ、ユーロ圏のソブリンは他の地域よりはまだ優位にある。

 これまでに投機的格付けとなったのは、ギリシャ、ポルトガル、キプロスの3カ国で、それ以外は投資適格である。投資適格のソブリンが デフォルトになった確率は過去15年間で僅か1%と低い。

 ただし、16カ国のうち14カ国のアウトルックがネガティブである点は注意が必要だ。これは、

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