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日本にも債務危機が来るのか

原田泰

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

 フランスの国債が格下げされて、ヨーロッパの債務危機はますます深まっている。日本がギリシャやイタリアのようになったら大変だ。イタリアでは金利が上がって、増税しても金利払いの増加に間に合わないという状況にある。だから一刻も早く消費税を引き上げて、財政赤字を解消し、将来の金利上昇リスクに備えなければならないという人もいる。しかし、私は、少し違うのではないかと思っている。

フランス北東部のメッスで1日、新年の演説をするサルコジ大統領=2012年1月1日、ロイター

エコノミストは財政赤字について何も知らない

 まず、第1に、エコノミストも経済学者も格付会社も、国の債務と金利の関係について何も知らない。財政赤字と金利の関係について、経済学者は答を持っていない。ある閾(しきい)値を超えると金利が上がるが、それまでは何も起こらない。しかし、閾値がどこにあるか分からない。

 また、財政赤字の閾値は、経常収支の状況にも依存するらしい。経常収支黒字が大きければ、財政赤字が大きくてもなかなか金利は上がらないらしい(日本がそうだ)。しかし、1兆円の財政赤字に対していくらの経常収支黒字があれば大丈夫なのかは分からないというのが、正直な経済学者の答えだろう。

 日本の財政事情は、指標にもよるが、ギリシャやイタリアよりも悪い。それでも日本に何も起きていない。閾値があるがどこにあるか分からないというのは、何も分からないというのと同じである。

増税すれば支出減のインセンティブは生まれない

 第2に、今、増税して財政赤字を縮小すれば金利が下がるのであれば(これ以上、どう下がるのか分からないが)、増税してそれを使わないで我慢するインセンティブが政治家に生まれる。しかし、金利も下がらないのであれば、我慢するインセンティブは生まれない。

 現在、超低金利の日本人には分からなくなっているが、金利が安いことは安く借入れできることだから、魅力的なことである。ギリシャやポルトガルやスペインやイタリアは、ユーロ圏に入るまでは高金利国だった。ところが、ユーロ圏に加盟して金利が下がった。だからこそ、これらの国の政治家は、無理をしてまでユーロ圏に入ったのだろう。金利の低下自体は良いことだったが、それでむやみに借りすぎて、金利が高くて借りられない状況よりさらに悪くなってしまった。

内閣改造を受け、記者会見する野田佳彦首相=2012年1月13日午後6時14分、首相官邸

 日本の金利がこれ以上下がらない状況で増税に成功すれば、その分は、今使わなければ損だと政治家が思うのは無理もない。さらにそれを通り越して、

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