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台湾経済を飲み込むブラックホール中国

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 台湾を二分した1月の総統選挙は、中国との関係強化を訴えた国民党の馬英九総統が再選を果たした。しかし、得票率は前回を下回り、野党候補の善戦が目立った。この10年間、成長する中国経済に密着したことは台湾経済を発展させたが、一方で中国なしでは台湾経済は成り立たなくなり、産業空洞化が猛スピードで進んで地方都市は活力を失った。

拡大公園の道路わきに並んだ選挙候補者の旗

 日本で起きている空洞化や中国依存をもっと極端にして見せてくれるのが台湾だ。短期的な利益を追求するあまり、地道な技術開発や技術者の育成を軽視する姿勢も目立つ。中国との関係を深める日本にとっては自戒の意味で教訓になる。

 筆者は総統選挙直前の1月中旬、台湾各地を見て回った。南部の高雄市では企業が中国に生産拠点を移したため、工業団地などには空き地が目立ち、ゴーストタウンのようになった地域があった。台湾は中国と同じ2001年にWTO(世界貿易機関)に加盟すると、当時の陳水扁総統が中国本土への投資を急加速させた。

 その前の李登輝総統は「戒急用忍」(急がず忍耐する)をスローガンに、台湾の独立維持の立場から中国への投資にブレーキをかけていたが、陳総統が政策転換し、馬総統もそれを引き継いだ。加工組立産業、縫製業、食品、家具、靴製造業などの伝統産業が安い人件費に引かれ、思い切りよく先祖の地を捨てて中国に移転した。

 2010年だけ見ても台湾企業による対外直接投資174億ドルのうち146億ドル(84%)が中国向けという偏り方だ。

 当然、台湾では空洞化が進んで失業率が上昇し所得格差が拡大した。政府が公表している失業率は4―5%台で以前の2倍の高さだが、地元の人は「職人たちが仕事を失い、潜在失業率は10%に近いはずだ」と言う。

拡大選挙直前、庶民でにぎわう高雄市の屋台村

 中国に進出した台湾企業の事業は当初は好調だったが、最近は人件費や物価が高騰し、人民元高が進んで輸出の採算が悪化した。中国経済の減速に加え、主な輸出先である欧州の不況にも痛撃されている。かといって中国に多額の投資をした以上、今さら台湾に戻ることも難しい。中国に資本と設備と技術を投入したあげく、進路を決めかねている経営者も多い。

 農業も中国の圧迫を受けている。中国の農産物には輸入規制がかかっているが、 ・・・ログインして読む
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筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

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