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成長が格差を縮小させる

原田泰 原田泰(早稲田大学教授)

高齢者間の格差は縮小している

 日本の所得格差が拡大していることが大問題になっている。しかし、多くの検証によると、それは高齢化に伴う現象で、高齢化の影響を調整してみると、格差はそれほど広がっていない。所得の差は年齢が上がるにつれて開いていくため、もともと高齢者は他の年齢層に比べて格差が大きい。高齢化で所得のばらつきが大きい人々が増えれば、社会全体の格差も広がるというのである(大竹文雄『日本の不平等』第1章、日本経済新聞社、2005年)。

 図1は、年齢ごとのジニ係数を見たものである。

 ジニ係数とは全く平等ならばゼロ、一人の人がすべてを持っていれば1となる不平等度の指標である。指標が大きいほど格差が大きいことになる。これによると、40歳代以下を除いて、年齢ごとの格差はむしろ縮小している。年齢ごとの格差が縮小しているのに、社会全体での格差(図の一番右の平均)が大きくなっているのは、格差の大きい高齢者が増えたから、すなわち、日本の高齢化が進んだからだということになる。

 なぜ高齢者間での格差が縮小したかと言えば、年金制度が充実して多くの人が食べられるだけの年金を得られるようになったからだ。なぜ年金制度を充実できたかといえば、日本が豊かになり、高齢者が少なかったので、大した負担無しに気前の良い年金が払えたからだ(日本の豊かさが続いても高齢者が増えていくので年金制度は大変なことになるのだが、これについてはWEDGE infinity「無責任な増税議論 社会保障は削るしかない」http://wedge.ismedia.jp/articles/-/1600を参照されたい。

景気回復が続けば若者の格差も縮小する

 図2は同じ図で、若年層の部分を拡大したものだ。1994年まで若者の格差がほとんどなかったのに、

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