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国有化を経て、企業文化を作り直せ

安井孝之

 東京電力の「実質国有化」を巡って政府と東電との綱引きが続いている。原子力損害支援機構を通じて1兆円規模の公的資金を東電に投入し、再建を目指す案が有力だが、経営権を握られたくない東電経営陣らが抵抗する構図だ。

 だが、「値上げは事業者の義務であり、権利でもある」(西沢俊夫社長)といった発言が出る経営感覚では到底、再建は覚束ない。外科的な手法で東電の経営体制を見直し、企業文化を作り直すべきである。

 「エネルギーの最適サービスを通じてゆたかで快適な環境の実現に貢献します」。東京電力の経営理念である。東電のホームページによると「『ゆたかな快適な環境』とは、『便利でくらしやすいだけでなく、心豊かで、自然とも調和した持続可能な社会』と考えています」と付記されている。

 現状はどうか。「便利でくらしやすい」は電力不足のうえ、値上げ方針を打ち出しており、「不便でくらしにくい」。「心豊かで、自然とも調和した」は福島県を中心とした放射能汚染や福島第1原発の現状をみれば、到底、実現していない。福島第1原発の事故は東電の経営理念を完全に否定したものといわざるを得ない。

 だが、東電経営者らの一連の発言や対応をみていると、経営理念の実現こそが自らの存在意義であると本心で考えているとは思えない。

 値上げについての「義務と権利」発言は、

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