松浦新(まつうら・しん) 朝日新聞経済部記者
1962年生まれ。NHK記者から89年に朝日新聞社に転じる。くらし編集部(現・文化くらしセンター)、週刊朝日編集部、オピニオン編集部、特別報道部、東京本社さいたま総局などを経て現在は経済部に所属。共著に社会保障制度のゆがみを書いた『ルポ 老人地獄』(文春新書)、『ルポ 税金地獄』(文春新書)、『負動産時代』(朝日新書)などがある。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
東京電力が値上げをするという。「自由化料金」が適用されている契約者に対して17%の値上げを求めるとのことだ。ご丁寧にも大手企業のユーザーが多い「特別高圧」は1キロワット時あたり2円58銭(18.1%)、中小企業が対象になりやすい高圧は2円61銭(13.4%)と、詳細な値上げ幅まで公表している。
そもそも、このように細かい数値で公表することは、「自由化料金」という言葉と矛盾する。文字通り、自由に決まっている料金であれば、こんなに細かい数字を示すことの意味がない。それができるのは、実質的な「規制料金」だからではないか、という気持ちになる。
それはさておいて、東電が示した値上げの「根拠」は次のようなものだ。
東京電力によれば、08年度の「燃料費等」は2兆3656億円だったが、2012年度はそれが3兆521億円になる。この差額の6865億円を値上げでまかなうのだという。
しかし、これをまともに電気料金に反映させると、1キロワット時あたり3.22円の値上げが必要になる。それでは利用者に申し訳ないので、東電としても経営合理化をして、同0.71円の値上げをせずに済ませる。東電の努力のおかげで利用者は平均2.51円の値上げで済むのだという。
ちなみに、この試算は「税抜き」なので、消費税が加わることで冒頭の金額ができる。とても緻密な計算をしているようだが、根拠となる「燃料費等」とはなんだろうか。いったい、どういう構成になっているのだろうか。
それを東電に問い合わせると、「具体的には言えない」という。こんなに緻密な計算をしているのだから、計算の根拠があるはずだ。それを教えてもらいたいだけなのだが、答えはこうだった。
「3月に総合特別事業改革をまとめるまでは詳細は明らかにできない」(広報部)
要するに、客に値上げを迫るのに「詳しいことは言えないけど必要だからよろしくね」と言っているわけだ。
そんな疑問を持っていたところに、