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東電の実質国有化 「扉」開いた調査委員会報告書

小森敦司 朝日新聞経済部記者(エネルギー・環境担当)

 東京電力が実質国有化されるのか、政官業の綱引きが激しくなっているようだ。報道も過熱している。そんな国有化への「扉」を開いたのは、「東京電力に関する経営・財務調査委員会」が昨年10月に出した報告書だろう。東電に対して甘い、という人もいるが、筆者はこの報告書を評価している。この日本で9電力体制(沖縄を除く)が発足したのは60年前の1951年だった。ようやくその電力会社の経営に、メスが入った。

 調査委は政府の第三者委員会として昨年6月に発足。わずか4か月足らずだったが、この間、東電の資産や経費を急ピッチで洗い出し、厚いベールをはいでいった。この作業があって、いま、東電は国有化をめぐる、まな板の上のコイとなった。

 東電の経営がいかにお手盛りだったか、また、私たち消費者からいかに余分な電気料金を取っていたか。167ページにおよぶ報告書を読み進めると、驚くことがたくさん出てくる。こんな具合だ。

 (1)電気料金算定のもとになる見積もりが、実際にかかった費用よりも、過去10年間で計6186億円高かった――私たちが払う電気料金が、不当に高く設定されていた可能性があることを指摘している。

 (2)関係会社の大半が、外部との取引より東電向け取引で多くの利益を上げており、中には外部との取引でつくった赤字を東電の仕事で穴埋めしていた会社もあった――子会社をつくって身内で甘い汁を吸っていたのかもしれない。

 (3)東電が自己申告した今後10年の合理化方針は1兆1853億円だったが、委員会はそれに追加して1兆3602億円できる、とした――ここにいたってもなお、甘いリストラ案を出してきたことにダメだししたわけだ。

 私たち消費者は電力会社を選べない(地域独占・発送電一体)。しかも、

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