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雇用を巡る政策論争-製造業は特別なのか?

吉松崇 経済金融アナリスト

 リーマン・ショックを挟む2007年から2010年の間に、米国では800万人の雇用が失われた。失業率はピークで10%近くにまで上昇した。現在、景気が回復局面にあるものの、それでも失業率は8%台前半である。雇用問題が大統領選挙の最大の争点になることは疑いない。

 1月24日の一般教書演説で、オバマ大統領が最初に採り上げたのが、雇用拡大の為の政策であった。4年前の自動車産業救済策に関して、「政府が私企業を救済することに当時批判はあったが、100万人の雇用を守り、新たに16万人の雇用を生み、結局は成功だった」と述べ、更に「今や製造業がアメリカに戻りつつある。海外に流出した雇用を国内に取り戻した製造業に対して、特別の税制上の恩典を与える」と約束した。

アメリカの産業政策論争

 このところのニューヨークタイムズは、製造業と雇用を巡る民主党系エコノミストの政策論争の場となっている。最初に口火を切ったのは、オバマ政権の前経済顧問会議議長、カリフォルニア大学のクリスティナ・ローマー教授である。(“Do Manufacturers Need Special Treatment?” by Christina D. Romer, New York Times, February 4, 2012) 

 彼女によれば、製造業の特別扱いを正当化する論者の言い分は、

(1)製造業には高い集積効果がある

(2)製造業の不振が高い失業率の原因

(3)低学歴の労働者に比較的高い賃金を払って来たのは製造業である

という3点に整理出来る。ところが、

(1)集積効果はソフトウェア産業やハリウッドの映画産業にもあり、製造業の集積効果が他の産業に比べて特別に高いという証拠はない

(2)アメリカ製造業の衰退は過去30年に亘って続いており、足元の高失業率の原因ではない

(3)低学歴・高賃金というのは古き良き時代の話であり、現在生き残っている高付加価値製造業では要求される学歴水準が高くなっている

 したがって、製造業を特別視する理由はない。産業政策が正当化されるのは、 ・・・ログインして読む
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筆者

吉松崇

吉松崇(よしまつ・たかし) 経済金融アナリスト

1951年生まれ。1974年東京大学教養学部卒業。1979年シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)、リーマン・ブラザース等にて30年以上にわたり企業金融と資本市場業務に従事。10年間の在米勤務(ニューヨーク)を経験。2011年より、経済・金融の分野で執筆活動を行う。著書:『大格差社会アメリカの資本主義』(日経プレミアシリーズ、2015年)。共著:『アベノミクスは進化する』(中央経済社、2017年)。

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