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原発事故を再発させない最も簡単な方法

小原篤次 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

 巨大地震や大津波への対策は、道路・防波堤・港湾のようなハード面での議論や整備にリードされやすい。昨年の東日本大震災後も、土木、建築、都市計画など工学系の現地調査が精力的になされている。複数の現地調査が、1995 年の阪神淡路大震災の教訓で普及した免震設計について触れている。

 国道や高速道路の橋脚では、阪神淡路大震災で阪神高速道路高架橋が崩れ落ちたことを教訓として、橋桁と橋脚の間にゴムを挟む構造などで揺れを抑える免震設計が施されていた。しかし、今回の大震災の震動で、橋梁を支える積層ゴムが一部破断する損傷が確認された。阪神淡路大震災の想定を超えたということだろう。

人に関するソフト面の対策も急務

 「できるだけ屋内にとどまるように」――東日本大震災日の夜、こんな指示が筆者が当時いた職場であった。ただ、帰宅を希望すれば、それは認めるともいう。勤め人のさがか、一番に手を上げる勇気がなかった。逡巡していると、幸いなことに同僚の一人が手を上げた。「子どもを迎えに行きたい」。その瞬間、私も追随した。

 今後の被災地対策では、今回の規模の大津波や地震を想定して検討が開始される。このことに異論は少ないだろうが、さらに全国規模で、どのレベルの大震災を想定したハード面での対策が規定されていくのだろうか。簡単には解を見出せないだろう。また、震災当日に筆者が味わったような職場や組織における人間関係からの制約なども実際には無視できない。最適な避難行動への足かせになりうる。

 工学エンジニアリングの立場から最善の提案がなされても、実際の公共工事や民間工事の段階では、安全性の追求、確立だけでなく、費用対効果の経済性も考慮されなければならない。最終的には政府の判断に委ねられる。若者の定住促進のようなソフト面の対策も同時に進めたい。

 日本の国土は世界の1%にも満たないが、マグニチュード6.0以上の地震が発生した回数は2009年までの10年間で合計200回を上回り、世界の20%も占める。国土に比べて地震の発生頻度が非常に高いことになる。さらに、海岸線の長さで世界6位、面積あたりの海岸線で比べると、フィリピン、ギリシャに次いで世界3位で英国や台湾より長い。よって、津波の被害も受けやすいことになる。

 専門外の筆者からすると、東日本大震災後も、ハード面の防御や、将来的な地震予測実現に対する期待が打ち消せないでいた。筆者が昨年の4月7日、地質と防災を専門とする被災地の知人に宛てた質問の書き出しは「地震や津波に強い東北再生の可能性。ベターな場所、方策は何か」だった。

 しかし4ページにわたる専門的な解説の後に書かれた結論にはこうあった。「リスクを知っておくこと、それに対する有事の対応を日ごろから考えて生活すること」。つまり、当たり前の基本的な備えの重要性が強調されていた。

 報道機関で過去3回、原子力発電所に関連する取材に関わった。そうした経験から、震災直後、原発を含む被災現場での情報把握、政府からの詳細な発表が遅れるリスクは筆者なりに想定できた。

 原発に関する知識などすっかり忘れてしまっていたが、それでも門外漢なりに福島原発事故が「チェルノブイリ級」の事故だと直感できた。浴槽に水を貯め、飲料水と食料品、電池を確保し、乳幼児をもつ同僚らに電話連絡し注意を喚起した程度が、筆者の想定からできた対応だった。

原発事故の再発を防ぐ方法

 大震災は当面、正確には予期できないとしても、

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筆者

小原篤次

小原篤次(おはら・あつじ) 大学教員(国際経済、経済政策、金融)

長崎県立大学国際情報学部准教授。1961年、大阪府堺市生まれ。同志社大学法学部卒、国立フィリピン大学修士。朝日新聞社、チェースマンハッタン銀行(現JPモルガン・チェース)、みずほセキュリティーズアジア初代株式調査部長、みずほ証券リサーチ&コンサルティング投資調査部副部長を経て現職。【2015年12月WEBRONZA退任】

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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