メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

福島のコメ作付制限 ツケを負わされる生産者

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

 昨日の論考で、「経済学の原理から言えば、規制(安全性の基準)を強化・厳しくするときの追加的な便益と追加的なコストが一致するときに、規制の便益が最大となる。これを超えて安全性の基準を厳しくすれば、逆にコストの方が上回り、社会全体としての便益は低下する。」と述べた。

 このコストには、基準値を順守しているかどうか検査することに必要なコストのほか、規制の強化により、生産コストが上昇したり、生産ができなくなったりするという生産面でのコストが含まれる。今回の過剰な新基準のコストを負担させられるのは、農家、特にコメ生産者である。

 今年のコメの作付方針によれば、これまで作付を禁止していた地域に加え、昨年1キログラム当たり500ベクレル(暫定基準に相当)を超える放射性セシウムが検出されたコメが作られた地域では、作付が禁止される。

 しかし、1キログラム当たり100ベクレル(新基準に相当)から500ベクレル(暫定基準に相当)を超える放射性セシウムが検出されたコメが作られた地域では、当初農林水産省は作付を禁止する方針だった。だが、市町村の反対を考慮して、実際に生産されたコメについて出荷前に全量(全袋)検査を行うことなどを条件に例外的に作付を認める方針に転換した。

 これによって、作付禁止地域(自粛地域を含む)は昨年の1万ヘクタールから1万5百ヘクタールヘクタールに増加する。条件付きで作付が認められる地域は、4千ヘクタールである。

 農林水産省の当初の対応は厚生労働省の新基準に合わせたものだった。農林水産省はBSE事件の際、消費者をまったく無視してきた行政を行ってきたのではないかと批判された。当時農林水産大臣は消費者に軸足を置いた農政に転換すると表明した。また、今回の震災についても、消費者は放射性セシウムが少なければ少ないほどよいと感じていることを認識していた。

 このような中で、生産者寄りの姿勢を示すとマスコミ等から批判される。100ベクレル以上のコメが検出された地域で作付を制限しても、 ・・・ログインして読む
(残り:約642文字/本文:約1486文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

山下一仁の記事

もっと見る