2012年03月17日
政府が国家公務員の新規採用数を、09年度比較で7割以上カットする方針を決めたと伝えられている。11年度も37%、12年度も26%カットしているから、実現すれば3年間トータルでざっと1万人以上の新卒の雇用が失われることになる。
ちなみに「財政再建は待ったなしであり、増税も避けられない。その前に身を切る必要がある」というのが、政府の論理だ。身を切るとはいえ、既存の公務員のクビを切ったり賃金カットをすれば、相手は生身の人間だから文句を言われる。そこで、まだ存在しない未来の公務員をリストラするというわけだ。
だが、これは二重の意味で国民に対して失礼な話である。
まず、一人の首も切らずに人員削減を新卒採用でまかなおうとするのは、学生に対してありえないほど不公平な話だ(というか、少なくとも民間ではこれで「身を切った」とは恥ずかしくて言わない)。
そもそも政府は、経済危機や震災の影響に苦しむ学生の就職支援に、全力で取り組むことを表明している。2011年度だけで正規雇用に就けないまま卒業した大卒者が10万人に上る中、自ら1万人近い新卒枠を減らすことは、政策としての整合性が著しく欠けている。
そして2点目は、行政サービスの受け手である国民全員に対して失礼極まりないということだ。
熾烈な競争にさらされている民間企業であれば、あくまで競争力の維持を最優先せねばならない。そこで、血のにじむようなコストカットを下請けやグループ企業に押しつけつつ、自らも早期退職や(場合によっては)リストラもする。そうやって自らの周辺に血を撒き散らしつつ、組織の活力たる新人採用への影響を最小限に抑えようと努めるものだ。
だが、いきなり新卒採用カットで帳尻を合わそうとする国に、そうした姿勢は皆無だ。これでは国民の上にあぐらをかいていると言われても仕方ないだろう。
もう一つ、筆者が落胆したのは、
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