榊原英資
2012年03月17日
消費税増税を実現するために野田政権は国家公務員の新規採用を四割削減するという。まったく何をかいわんやである。日本の行政システムについて基礎知識を欠いているといわざるを得ない。どうも松下政経塾出身者は不必要に反官僚意識が強く、それなりの志はあるのだが適切な政策の実行力に欠けているようだ。
人口1,000人あたりの日本の公務員(公社公団、政府系企業を含む国家公務員と地方公務員の合算)の数は42.2人とイギリスの97.7人、フランスの95.8人、アメリカの73.9人を大きく下回る。特に国家公務員については人口1,000人あたり12.6人とイギリスの48.7人と比べると四分の一。連邦制をとるアメリカの9.9人をわずかに上回る程度だ。実数で見ると160万6,000人と連邦国家であるアメリカの290万人とドイツの183万9,000人よりもかなり少数である。(平成18年8月野村総研調査による)
実は日本の公務員数の少なさは日本の財政規模の小ささの結果でもある。日本の一般政府歳出の対GDP比は2008年ベースで37.1%。データのあるOECD諸国28カ国のうち24番目の規模だ。日本より小さいのはメキシコ、韓国、スイス、アイルランドだが、人口5,000万人以上の先進国では日本は最小。
図表はOECD諸国の財政と公務員数を示したもの。日本は財政規模も小さいのだが、公務員数ではOECD諸国中最小。財政規模が日本より小さいスイス、韓国、メキシコなども公務員数では日本よりも多いのだ。つまり、日本は少数の公務員で小さな政府を維持しているOECDのいわば優等生なのだ。
消費税増税を実現するためとはいえ、これ以上公務員を削減する必要が本当にあるのだろうか。特に行政機関、議会、司法の国家公務員は人口1,000人あたり4.0人と実にイギリス38.8人、フランス44.2人の十分の一。これ以上削減すれば
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